人口崩壊にどう向き合うか:増田レポートの波紋

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日本の少子化が進み、その結果人口の急激な減少が懸念されるようになった。この減少は、世界史的に見ても前例のないすさまじい規模のもので、人口減少と言うような生易しい言葉ではなく、人口崩壊ともいえるものだと指摘されている。ある試算によれば、現在約1億3千万人の人口が、2060年には8千700万人にまで減少するという(もっとドラスティックに減少するという試算もあるようだ)。

そこで、このすさまじいトレンドに対して、どう向き合っていくかが問題となる。すなわち人口崩壊対策だ。大きく二つに分かれるだろう。ひとつは、人口減少に歯止めをかける政策をシステマティックに採用し、人口増加とまではいかないが、人口減少の圧力を少しでも和らげようという政策。もうひとつは、人口減少のトレンドそのものは所与のものとして前提し、その上で、人口減少によるマイナス効果を少しでも緩和しようとする政策だ。

岩手県知事や総務大臣を経験し、日本の人口減少傾向に対していち早く問題意識を表明した増田寛也氏は、後者の範疇に入ると言ってよいのだろう。増田氏は、人口減少は基本的なトレンドとして避けられないのだから、いたずらにそれを食い止めようとしても能がない。それよりも、人口減少による地方の崩壊を少しでも和らげる政策をとる方がよい。なぜならいまのままで放置しておくと、地方自治体は枕を並べて軒並み崩壊することになる。そうさせないためには、地方自治体のうちで、生き残るべきものと消滅するに任せるべきものを選別し、生き残った自治体が地域の拠点として繁栄する道を残すようにすべきだ、と言ってきた。

その増田氏が先日公表した所謂「増田レポート」は、そうした日頃の氏の問題意識に沿ったものといえよう。このレポートの中で氏は、将来的に896の市町村が「消滅可能」であり、そのうち523自治体は「消滅する」と断定した。

このレポートは、将来の人口トレンドについて分析しただけであって、対策については言及していない。だが、この数字を見せられた人々のうち、消滅すると断定された自治体関係者をはじめとして、多くの人が、もはや自治体の消滅は避けられない事態だと観念し始めているようだ。中には、そうした空気を踏まえて、消滅するような自治体は切り捨てて、見込みのある自治体に財政資源を集中すべきだ、というような議論も巻き起こっているようだ。

こういう議論をするものは、いわゆる右寄りの人に多い。彼らは、日本の人口がドラスティックに減少すること自体には、大した危機意識を持っていないようだ。だが、安倍首相はそうでもないらしく、できれば人口減少の規模を小さくして、1億人程度の人口は維持したいと考えているようだ。彼がそう考えるのは言うまでもない。富国強兵政策には、一定程度の人口の維持が欠かせない、という判断が働いているからだ。







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