いま日本はタカ派ばかり:佐高信の毒舌談義

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毒舌家で知られる評論家の佐高信のことを、筆者は名前だけは知っていたが、彼が書いたものは読んだことがなかった。最近、「週刊金曜日」という雑誌の中で、右翼の大物といわれる朝堂院大覚と対談しているのを読んで、そのなかでかなり過激なことを言っているのに感心し、一つ別のものも読んでみようという気になった次第であった。

「いま日本はタカ派ばかり」と題したこの本は、題名にあるとおり、タカ派が跋扈するいまの日本を批判したものである。佐高は、今の日本のタカ派を代表する人物として5人を挙げ、それぞれに厳しい論評を加えている。

トップは石原慎太郎。これを佐高は老害醜悪タカといって、八十を超えた老人が日本に害悪をまき散らしていると批判し、その無責任な言動ぶりから「耄碌したヒットラー」と罵っている。

次は猪瀬直樹。これはもう没落して過去の人間になってしまったが、佐高がこの本を書いた時にはまだ現役で、世の中にさまざまな害悪を流していた。そんな猪瀬を佐高は「ちゃっかり便乗タカ」と呼んで軽蔑する。小泉や石原に取り入って一人前の顔をするようになった「権力の道化」だというのである。

三番手は安倍晋三。いうまでもなく今の日本国総理大臣である。これを佐高は「もはやお呼びでないご都合主義の御坊ちゃん」と称しているが、どうしてどうして安倍本人はその後復活して総理大臣になってしまったわけである。安倍が第一次政権をほっぽりだしたいきさつは誰でも知っていることで、佐高はそれを持ち出して、「ボクちゃん、ぽんぽん痛いの」といいながら、つねに中途退場の恐怖におびえていた「中途不安タカ」といっているが、その見立てはどうやら甘すぎたようだ。

四番手は橋下徹。これを佐高は「弱い犬ほどよく吠える」の典型で、中身のない「口先三寸タカ」だと評している。その口先が聊か滑って物議をかもし、世界中の笑いものになったことは、読者諸兄の記憶に新しいところだろう。この点では、佐高の見立てはあたっていたということか。

最後はお笑い芸人のビートたけし。佐高がなぜ一芸人のビートたけしを目の仇にするのか、ちょっとわかりづらいところもあるが、要するに原発に対する姿勢が気に食わないということらしい。たけしを一躍有名にしたせりふに、「赤信号みんなで渡ればこわくない」というのがあるが、そんな調子で原発を受け止めていたから、こんなとんでもないことになったので、福島原発事故の責任の一端はたけしにもある、といいたいようだ。

このほか、読売のナベツネとか、竹中平蔵とか、日本に害悪をまき散らしているタカ連中への、佐高の批判はやむことがない。

佐高の面白いところは、タカ派なら全部嫌いか、といえばそうでもないという点だ。タカ派でも面と向かって批判しない者もある。その代表は櫻井よし子だ。櫻井がいまや日本の「ネトウヨの女神」的存在になっていることはよく知られているとおりだ。その櫻井を、佐高は批判しないどころか、褒めたりまでしている。いったいどういうわけなのか。

それにしても、佐高の毒舌ぶりは尋常ではない。こんな毒舌を日頃吐き続けて、よくも火傷をせずにすんでいるなと不思議に思う。






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