香鑪峯下新卜山居草堂初成偶題東壁:白楽天を読む

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江州に来た翌々年(元和十二年)の春、白楽天は魯山の香鑪峯の麓に草堂を建てた。陶淵明の生き方を思うにつれ、官を捨て去るには到らないが、せめて静寂に包まれて思索に耽りたいと願ったからだった。草堂が完成するや、白楽天は「香鑪峯下新卜山居草堂初成偶題東壁」五首を作った。これはその第一首である。

白楽天の七言律詩「香鑪峯下、新たに山居を卜し、草堂初めて成り、偶たま東壁に題す」(壺齋散人注)

  五架三間新草堂  五架三間の新草堂
  石階桂柱竹編牆  石階 桂柱 竹 牆を編む
  南簷納日冬天暖  南簷 日を納れて 冬天暖く
  北戸迎風夏月凉  北戸 風を迎へて 夏月凉し
  灑砌飛泉纔有點  砌に灑ぐ飛泉は纔かに點有り
  拂窓斜竹不成行  窓を拂ふ斜竹は行を成さず
  來春更葺東廂屋  來春更に東廂の屋を葺き
  紙閤蘆簾着孟光  紙閤 蘆簾 孟光を着けん

五架三間の新草堂、石の階段に桂の柱に竹のまがき、南向きの庇は陽が差し込んで冬も暖かく、北向きの戸は風を入れて夏でも涼しい(五架:家の奥行きの単位、柱と柱の間が五あること、日本で言う桁ゆきに同じ、三間:家屋の幅の単位、梁ゆきに同じ、南簷:南向きの庇)

石畳に注ぐ滝は飛沫を飛ばし、窓に覆いかかる竹は生え放題、来年の春には東廂の屋根も葺いて建て増しし、紙障子の部屋に芦のすだれをかけ、我妻を置くとしようか(砌:石畳、有點:飛沫が飛んで斑点模様ができること、東廂:東側の付属部屋、紙閤:紙の障子、蘆簾:葦のすだれ、孟光:妻の別称、後漢の隠者梁鴻の妻の故事から)







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