白楽天の七言律詩「春江」(壺齋散人注)
炎涼昏曉苦推遷 炎涼 昏曉 苦(はなは)だ推遷し
不覺忠州已二年 覺えず 忠州 已に二年
閉閣只聽朝暮鼓 閣を閉じて只だ聽く 朝暮の鼓
上樓空望往來船 樓に上って空しく望む 往來の船
鶯聲誘引來花下 鶯聲に誘引せられて花下に來り
草色句留坐水邊 草色に句留せられて水邊に坐す
唯有春江看未厭 唯だ春江の看れども未だ厭かざる有り
縈砂繞石淥潺湲 砂を縈(めぐ)り石を繞って淥潺湲たり
暑さと涼しさ、朝と夜とがこもごも移り変わり、忠州に来て、あっという間に二年たった、部屋を閉めてはただ聞く朝晩の時報の鼓、楼に上っては空しく望み見る往来の船(炎涼:暑さと寒さ、昏曉:夕方と朝方)
鶯聲に誘われて花の下に来り、草の色に引き留められて水辺に座す、春江はいつ見ても飽きることがない、砂をめぐり石をめぐって緑の水が流れている(句留:引き留める、潺湲(せんえん):水が流れるさま)
元和十四年(819.48歳)、白楽天は忠州(四川省)の刺史に移された。「春江」と題する七言律詩はその翌年に読んだもの。長江沿いの眺めのよい風景につつまれて、のんびりとくらしている様子が歌われている。
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