山水屏風:やまと絵

| コメント(0)
yamato01.sansui11.jpg
(東寺山水屏風、各扇146.4×42.7cm、11世紀)

真言密教では、灌頂という儀式を行う際に、山水屏風を立てて場を設定した。その屏風の一部が東寺、神護寺、醍醐寺など密教寺院に残っている。当時民間で愛用された図屏風が残っていない中で、これらの山水屏風は、屏風について考える貴重な手がかりになっている。

現存する山水屏風はいずれも、六扇からなり、各扇は表装裂という帯状の布で縁取りされている。各扇をつないでいる蝶番を目隠しするとともに、装飾的な意味合いも持たされたようだ。

密教寺院の山水屏風は、私的な邸宅で用いられた図屏風とはことなり、公式の場で用いられたので、それなりの威儀を伴っている。例えば、人物の様子が中国風なのは、唐絵の伝統を踏まえたものだが、唐絵はこの当時にあっても、威儀のあるものとして受け取られていたと考えられる。

しかし、背景となる山々や樹木の有様は和風の風景であり、この図柄が唐絵とやまと絵の混合したものであることを物語っている。

yamato02.sansui21.jpg
(神護寺山水屏風、各扇110.8×37.5cm、12世紀後半)

神護寺に伝わる山水屏風は、東寺のものよりも時代が下っているだけに、いっそう和風の感じが強くなっている。背景となる風景をはじめ、人物も家屋も和風である。

面白いことに、これらの山水屏風は仏教の儀式のために用いられたにかかわらず、仏教的な匂いがまったく感じられない。

関連サイト:日本の美術 






コメントする

アーカイブ