ゴッホやムンクの絵が色あせる:カドミウム顔料が原因

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ゴッホの「ひまわり」の鮮やかな黄色が色あせたり、ムンクの「さけび」の中のアプリコット色がアイヴォリー・ホワイトに変色するなど、名画が色あせる現象が生じているという。専門家の分析によれば、これは当時流通し始めていたカドミウム・イエローが原因だという。この顔料は空気に触れたり紫外線があたったりすると変色するのだという。ゴッホやムンク以外にも、カドミウム・イエローを使った画家は多くいると思われるから、今後近代名画の変色問題が大規模に生じるかもしれない。

この報告に接して、筆者は当初意外な気になった。というのも、カドミウム顔料は耐光性にすぐれていると広く考えられてきたからだ。同じ条件で光にさらすと、カドミウムを含む顔料は強固な耐光性を示すとの実験結果も出ている。今回の事態は、その実験結果と一致しない。

耐光性の実験は、光にさらすことを内容とするものだが、そこには当然空気や紫外線も介入するはずだ。しかし、多くの実験は精々一か月くらいの期間に留まっているので、長年にわたる影響までは分からなかったのかも知れない。

カドミウムは、イエローの外にオレンジやレッドなど暖色系の顔料に広く使われている。他の顔料に比べて高価に関わらず人気が高いのは、色彩の鮮やかさもさることながら、その耐光性のためだった。それがかえって色あせしやすいとの結果が出たわけだから、今後の画家の顔料選択に大きな影響を及ぼすだろう。





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