白楽天の七言絶句「湖中に宿す」(壺齋散人注)
水天向晩碧沈沈 水天 晩に向ひて碧沈沈
樹影霞光重畳深 樹影 霞光重畳として深し
浸月冷波千頃練 月を浸す冷波は千頃の練
苞霜新橘万株金 霜を苞む新橘は万株の金
幸無案牘何妨酔 幸に案牘無し 何ぞ酔ふを妨げん
縦有笙歌不廃吟 縦(たとい)笙歌有るも 吟ずるを廃せず
十隻画船何処宿 十隻の画船 何れの処にか宿する
洞庭山脚太湖心 洞庭の山脚 太湖の心
夕刻に向かって水面と空が溶け合い緑がひっそりと静まる、樹影が夕もやの光を浴びて折り重なって見える、月を反射する冷波は銀色に光り輝き、霞にぬれる橘は黄金を連ねたようだ(水天:水と空、沈沈:ひっそりと静かなさま、練:ねりぎぬ)
さいわい仕事がないので酔ってもさしつかえない、だがたとえ笙歌があっても詩を吟ずるのをやめるわけにはいかない、さて十隻の画船をくりだしたがどこに泊まったものか、洞庭山のふもと 太湖の中心がよかろう(案牘:机上の書類、仕事のこと、画船:絵を描いた船、洞庭:太湖の中にある島の名)
蘇州といえば太湖、そこに遊んだ際の詩、洞庭とは太湖に浮かぶ島で、遠くから見ると山が浮かんでいるように見えるという
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