陸奥小紀行三:竜飛岬

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午後、不老不死温泉を出たバスは間もなくして十三湖に到着した。十二湖が十二の湖からなっているのに対して、これは十三の川が流れこんでいることからこう名付けられたそうである。周囲25キロメートル、水深1~3メートルで、白鳥の飛来地として知られるとともに、しじみの産地としても有名なところである。

湖畔の店でシジミ汁を売っていたので一杯飲んでみた。味噌ではなく塩味仕立てで、汁が黒ずんでいる。なんとなく飲みづらいところに、しじみは小ぶりで実が小さい。もっとも、こんなしじみばかりではなく、店頭販売しているもののなかにはあさり程の大きさのものも見かけた。こちらと同じものを出されたら満足したかもしれない。

或る店の店先に津軽三味線の実演をしている男がいる。近づいてよく見ると、三味線と思ったのは実はスコップで、アンプの音に合わせてそれを操っているのであった。この破天荒なやり方がかえって話題となって、この演者は方々に引っ張りだこなのだそうである。

十三湖を出て竜泊ラインを北に向い、色づきつつある森を眺めながら峠を越え、五時頃竜飛岬に到着した。ここは青函トンネルの本州側の起点として有名になったところだが、もともとは漁村だった。大間同様マグロの一本釣りがさかんで、そのほかイカ漁なども行われているという。ここで釣れるマグロは大間で釣れるものと変わりはないのだが、値段にはなぜか差がある。いくらブランド力といっても、同じマグロの値段が天と地ほども違ってくるのは納得できない、と地元の漁師はいっているそうだ。

竜飛岬の灯台のあるところからは対岸の北海道がよく見える。ここはいつも風が強いのだそうだが、この日はそよとの風もなく、しかも穏やかに晴れていたので、北海道のスカイラインがのんびりとした様子に見えた。

投宿先のホテル竜飛は灯台のすぐ下にあった。青函トンネルの開通にあわせ、観光客の増加をあてこんでオープンしたという。それ故、ホテル内には青函トンネルに関するモニュメントがいくつかあった。ロビーの床には青函トンネルに直結する穴が掘られていて、列車がトンネルを通過するたびに、この穴を通じて轟音が聞えてくるのだという。

温泉の湯は透明で無味だった。効能書きにはナトリウムとカルシウムを多く含むとある。露天風呂もついていて、そこからは船の漁火がいくつも見えた。イカ釣り船だと思われる。

夕食は海の幸がふんだんに盛られ満足のゆくものだった。食後、部屋に戻ってウィスキーを飲んだ。無駄話の合間に、I が添乗員嬢を話題に取り上げ、彼女が誰かに見ていると思わないかと言った。心当たりがないと Y が言うと、ほら、浅田真央ちゃんに似ているとは思わないかと言う。そう言われれば似ていなくもない。特に目の所が似ている。眼鏡をかけているので気が付かなかったが、メガネを外せば似ているところが浮き出るに違いない、と話は発展していった。

浅田真央ちゃんの話が出たところで筆者は、真央ちゃんは安倍晋三に似ているといったところが、I と Y から猛烈な反発を食らった、いくらなんでも真央ちゃんを安倍晋三といっしょくたにするのは、あまりにも真央ちゃんがかわいそうだというのである。そうかなあ、垂れ目のところなんかは、なかなか似ていると思うんだがなあ、と筆者は改めて感じた次第なのだったが、たしかに I と Y の言い分には納得できるところもある。浅田真央ちゃんにとっても、安倍晋三といっしょくたにされるのは、愉快なことではないかもしれない。





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