伴大納言絵詞 中巻

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(伴大納言絵詞中巻、嘆き悲しむ左大臣"源信"家の人々、縦31.5cm)

中巻では、応天門火災の犯人の嫌疑をかけられた左大臣源信が朝廷に無実を訴える場面から始まり、主人の罪を嘆き悲しむ左大臣家の人々の様子が描かれたのち、真相解明の発端となった子供の喧嘩の様子と、舎人夫婦の証言によってついに真相が明らかにされるさまが描かれる。

上の絵は、主人の罪を嘆き悲しむ左大臣家の人々の様子を描いたもの。大部屋が障子(現在でいう襖)によって三つに区切られ、各部屋の様子を上から俯瞰するように描いている。本来あるはずの天井を省略して、透視画のように描くのは、やまと絵独特の描き方である。一番左手の奥まった部屋にいるのが、左大臣の妻と、その子であろうと思われる。

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(伴大納言絵詞中巻、子どもの喧嘩)

これは、事件解明の発端となった子供の喧嘩。喧嘩している子どもたちは、伴大納言家の出納(執事)の子と、身分の低い舎人の子。実はこの舎人が、伴大納言とその家来が応天門に放火した現場を見ていたのだった。舎人はことの重大さから、このことを胸にしまって誰にも言わなかったのであるが、自分の子どもが大納言の出納によって理不尽に蹴られたことに腹を立て、ついにはことの真相を暴露する。その証言によって大納言は犯人であるとされて、ついに有罪となるわけなのである。

この絵は、その子供の喧嘩の様子を描いている。画面のほぼ中央に、出納の子と舎人の子が取っ組み合って喧嘩しており、そこに左手から出納が駆けつけるさまが描かれている。そのすぐ下の画面では、出納が舎人の子を蹴飛ばし、それを出納の子が見てざまあみろとはしゃいでいる。なお、この画面では伺えないが、このすぐ左の画面で、出納の妻が我が子の手を引いて引き上げていくさまも描かれている。

このように、同じ画面に時間をずらした異なる様子を描き入れるのは、「異時同図法」といって、「信貴山縁起絵巻」の大仏殿の場面でも見られたものである。

関連サイト:日本の美術 






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