陸奥小紀行六:三陸海岸

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九月廿二日(月)晴。六時に起床して入浴すること毎日の如し。風呂場の脱衣場で体重を図るに、通常より一キロ以上も増加している。美食してかつ動かざるがためであろう。朝食を済ませ、七時四十分にホテルを出発。三陸鉄道の始発駅久慈を目指して進む。途中小川原湖をバスの窓より見る。この湖は周囲六十六キロメートルあり、十和田湖よりも大きいという。

十一時半に久慈駅に到着。列車の出発を待つ間、駅前の土産物屋に入り、「北の海人」のTシャツを家内への土産に買い求める。「北の海人」とはいうまでもなく、昨年大当たりしたNHKの連続ドラマのことである。三陸海岸を舞台に、海人たちの健康的な生き方を描いたものだという。「~という」というのは、筆者はこのドラマを見ていないから、こういうわけなのだ。しかしその評判のことならよく聞いている。

列車は十二時十五分に出発した。わずか二両編成のこじんまりとした列車である。陸前野田という駅を過ぎると海岸線が現れ、造成中の荒涼とした土地が見えた。3.11の津波の跡だ。列車はそのまま海岸線に沿って走り続ける。津波の痕跡を感じさせる光景もあれば、そうではない眺めもある。村によっては、防潮堤が機能して難を逃れたところもあるという。堀内という駅の手前は切り立った崖の上を走るとあって、頗る眺めがよい。眼下に広がるそうした光景のいくつかは、特に安家川鉄橋といわれる橋梁からの眺めなどは、「北の海人」の中でも紹介されていたといい、乗客たちはその番組の内容を思い出したりして、しきりと懐かしがっていた。

列車は三十分ほど走ったあと普請駅に着いた。ここで下車してバスに乗り込む。バスは二十分ほど走って、北山崎の展望台というところに着く。三陸海岸のうちで最も眺めのよい場所として評判なのだそうだ。我々は、展望台近くの食堂に入って、支給された雲丹の弁当を食ったあと展望台に向かった。

展望台は海に突き出た崖の上に位置しているとあって頗る眺めがよい。リアス式の込み入った海岸線が一種独特な雰囲気を醸し出している。上からの眺めばかりではない。石段を下りれば、波打ち際から急峻な崖の光景を眺め上げることもできる。体力に自信のない筆者は下まで降りる気にはならなかったが、まだ若さの片鱗が残っている I は一人で下りていった。

北山崎での展望が終ったところで、今回の旅行の観光プログラムはすべて終了した。バスは山中の道を一路西へと走り、夕方近くに盛岡駅に到着した。そこより午後六時四十分発の新幹線やまびこ号に乗り、十時丁度に東京駅に帰還した。





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