たわけのたわごと

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今ではあまり聞かなくなったが、かつては愚かな行いをするものを「たわけ」といって罵った。かくいう筆者も子供の頃に、愚かなことをした際に、年長の者から「たわけ」と言われたものだ。

「たわけ」はもと「たはけ」と書いた。「たはけ」とは「たはく」という動詞の名詞形である。「たはく」は古い言葉で、古事記にも「伊呂妹軽の大郎女にたはけて」などと出てくる。伊呂妹(いろも)という男が軽の大郎女(かるのおおいらつめ)という女性にふざけかけたという意味である。「たはく」は、ふざけるという意味の外に、愚かなことをする、みだらなことをするという意味もあった。だから、上述の伊呂妹の行為には、性的にみだらな、という意味も含まれている。

「たはく」の類語に「たはぶ」、という言葉がある。「たはぶ」は「戯ぶ」と書き、戯れるとかいたずらをするといった意味合いの言葉である。この動詞が変化して「たはぶる」となり、そこから「たはぶれ」、「たはむれ」などといった名詞が出来た。

「たはく」も「たはぶ」も「たは」を語根としているが、同じく「たは」を語根とするものに「たはむ」がある。これは外力によって曲がることを意味する言葉だが、「曲がる」には常軌を逸するという意味合いもある。「たはけ」も「たはぶれ」も正常な状態の正反対をあらわしているから、常軌を逸しているという点で共通項があるわけだ。

「たはごと(=たわごと)」は、「たは」な「ことば」という意味である。つまり、常軌を逸した、馬鹿げた、卑猥な、遊び半分の、といった意味合いを持った言葉である。

以上、「たは」を語根とする言葉には、いずれも、常軌を逸した、馬鹿げた、卑猥な、遊び半分の、といった意味合いが含まれていることがわかる。その「たは」の語源が何であるかについては、いまのところつまびらかにしない。






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