源氏物語絵巻1:蓬生、関屋

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(源氏物語絵巻、蓬生)

蓬生の巻は、末摘花との再会の場面を描く。源氏は、須磨にいた折に末摘花と契りを結んだのだったが、その後は忘れたままに捨て置いていた。一方、末摘花の方は、源氏と再び会える日を待ち望み、叔母が引き取ろうというのを拒んで、ひたすら待ち続けていた。

四月の頃あい、源氏はひさしぶりに花散里を訪ねようと思い、惟光とともに歩いていた途中、松に藤が咲きかかり、築地の崩れた屋敷を通りがかった。それこそ、末摘花の住む屋敷であった。そこで源氏は、忘れていた末摘花のことがかわいそうになり、我ながらつれないことをしたと後悔しながら、惟光に案内させて、邸の中に入っていった。

邸は浅茅・蓬が生い茂り、荒れ放題であったが、末摘花は期待がかなってうれしい気持ちになり、なんとか取り繕って源氏と対面した。

この絵は、源氏が惟光に案内させて、末摘花の邸に入っていく場面を描いている。庭には浅茅・蓬が生い茂り、建物は朽ちて崩れかかっている。その建物の奥の方に末摘花の横顔姿がちらりと描かれている。末摘花は赤鼻で醜い容貌ということになっているが、この絵の中では、そこそこ美しく描かれている。

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(源氏物語絵巻、関屋)

かつて源氏が懸想しながら、夫がある身としてそれを拒絶した空蝉は、その後夫の任地で暮らしていたが、夫の任期が切れたことで都に戻ることになった。その途中、逢坂の関にさしかかったときに、石山寺詣でに向かう源氏の一行の行列に出会った。夫は妻の空蝉とともに、車を木陰に止めて行列を見送った。

車の中から空蝉の姿を認めた源氏は、使者(空蝉の弟)を通じて、今日の巡りあいは決して忘れないと伝言した。空蝉はそれに応えて、「行くと来とせきとめがたき涙をや絶えぬ清水と人は見るらん」という和歌を贈った。

この絵は、秋の逢坂山をバックに、源氏の行列と、それを見送る空蝉たちを描いている。

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