インドでカースト犯罪が多発

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インドで最近起きた一連のレープ事件が世界中の耳目をそばだたせたが、その背景には、カースト意識に基づいた人権軽視の考え方があると筆者は思っている。カーストがらみの犯罪は、近年減少傾向にあったとされてきたが、最近になってまた盛んになってきたようだ。その例として、英紙ガーディアンがいくつかのケースを報告している。(Lynching of boy underlines how the curse of caste still blights India By Jason Burke)

最近ビハール州で、ダリト(不可触民)に属する15歳の少年が地主のカーストに属する牧場主とその仲間によって暴行されたあげく火をつけられ、生きたまま焼き殺された。理由は、その少年のヤギが自分の牧場に迷い込んで草を食べたというものだった。また同じビハール州で今月、五人の女性が上級カーストに属する男たちによって集団レープを受けた。これは氷山の一角で、ビハール州だけに限っても、昨年刑事手続きにかけられていたカーストがらみの暴行事件は1万7千件に上ったという。

ビハール州でカースト犯罪が多発している事には、特殊な事情があると記事はいう。ダリト出身の政治家マンジー氏が、ビハール州政府の首相になったことだ。彼は出身階層であるダリトの権利拡大のために様々な政策を打ち出したが、それが上級カーストの怒りを呼び起こし、ダリトに対する攻撃を強めさせたというのだ。

21世紀になってもなお、古い階級格差が現存し、それが凶悪な犯罪を育む土壌になっている光景は、現代人の目には異様とうつる。都市化の進展などにより、習的な身分格差は次第に消えて行く傾向にあると指摘されているが、そう簡単にはなくならないようだ。

そのひとつの原因として、インド社会が過去のマイナス面を十分に克服してこなかったことがあると指摘されている。論者の中には、その責任をガンジーに求める者もあるという。ガンジーは、イギリスからのインド民衆の全体としての解放は求めたかもしれないが、その民衆の中に存在した身分格差はそのまま放置した。だからインドは、古いカースト制度を引きずったまま、近代化に向かったというのである。






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