オバマ敗北でアメリカはどう変わる

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アメリカの中間選挙の結果、オバマの民主党が敗北を喫し、共和党が上下両院で過半数を制した。これをオバマ自身が、歴史的な敗北というような表現を使って素直に認めた。その責任の一端は自分にもあるというのだろう。

今回の選挙結果についてはいろいろな見方があるようだが、共和党に追い風が吹いたというよりは、民主党の自滅だとする見方が強いようだ。民主党は、移民政策や格差解消策を始め色々な公約をしたにかかわらず、ほとんどそれをサボってきた。だから民主党を懲らしめてやるために、共和党に勝たせてやったのだ、というような解説が方々で言われている。どうも、そのあたりは2年ほど前の日本と似たところがあるようだ。

近年は失業率も大幅に改善され、経済指標が上向いて来ていた。アメリカ大統領の人気は経済動向によって決まるといわれるほど、経済動向は重要なのだが、その経済動向が上向きなのにかかわらず、オバマ人気は下がる一方だった。かつて、民主党のクリントン大統領は、さまざまなスキャンダルにかかわらず、人気が衰えないのは経済が好調だからだ、といわれたものだが、それと比較すると、時代の相違を感じさせる。オバマにはたいしたスキャンダルがないにもかかわらず、しかも経済指標が悪くないにもかかわらず、人気は低下する一方なのだ。

共和党が上下両院を制したことで、今後のアメリカ政治はどう変わっていくか、早速さまざま憶測が流れている。大きく変わるだろうという意見もあり、そうはかわらないだろうとする見方もある。

共和党が上下両院で多数を占めたことによって、議会内部でのねじれはなくなるだろう。これまでは、下院を共和党、上院を民主党が制していたので、上下両院の間でねじれがあった。そのおかげでオバマは、議会と直接対立するリスクを回避できたこともあった。上院が下院の理不尽な法案に対して、オバマに変わって対抗してきたからだ。ところが、これからは、共和党が優位を占める議会が全体としてオバマと対立する構図ができあがる。オバマには、拒否権という武器もあるが、議会と全面的に対立するということになれば、今でも決められない政治といわれている状況が、いっそう深刻になる可能性もある。

いまの共和党の政策的な特徴を簡単にいうと、次のようなものである。外交的にはアメリカの名誉を重要視すること、したがって対外的な進出に積極的であること。白人中心的な傾向が強く、したがって移民に対しては厳しい姿勢をとっていること、それがオバマの移民政策への強い反対という形であらわれているわけだ。経済的には、新自由主義的な傾向が強いこと、そのコロラリーとして、格差対策には消極的であること。

以上の特徴は、オバマ民主党の正反対というべきものだ。消極外交と積極外交、マイノリティ重視と白人重視、新自由主義的経済政策と福祉重視の経済政策、これらが互いに対立しあって、議会とオバマとの間で深刻なバトルに発展するのではないか。そんな見方が強くなされている。

しかし、共和党としても、これらの政策を無闇に推進できる状況ではない。もしそんなことをすれば、2016年に向けて、自分たちの足元を危うくするような結果につながる。積極外交といっても、いまのアメリカにはシリアやイラクにこれ以上軍事介入しようという雰囲気はないし、移民政策で強硬な姿勢を貫けば、ヒスパニックなどのマイノリティの離反を招く。今回オバマが敗北したのは、マイノリティに離反されたからだとする見方が強いが、マイノリティの離反は共和党にとっても大きな悩みの種に違いない。また、新自由主義的経済政策という点では、目下最大の課題はTPPで、共和党としては本来それを推進すべき立場になるのだが、ほかならぬ政敵のオバマ自身がそれに熱心だということもあって、共和党としては複雑な気持ちを抱いている。

以上のようなさまざまな事情が複雑に絡んで、共和党対民主党の対立図式には、一筋縄では捉えきれないところがある、ということだろう。







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