円高と輸出の相関

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上の表は、最近の円安と日本の輸出との相関関係をあらわしたものである(ソースは英誌 Economist)。2011年の末から今日まで、円安傾向はほぼ一貫して続いているのに対して、日本の輸出の伸びはかならずしもそれに比例して伸びていないことがわかる。名目の輸出額は伸びているが、実質輸出量は伸びておらず、2011年末を100とした実質輸出量は全く変わっていない。一方その間における円の相場は80円から110円へと、実に三割以上も下落している。

名目の輸出額が円安によって延びるのは当たり前のことだ。普通のケースでは、為替が下落すると、それに応じて名目の貿易所得が増えるのと並行して、実質輸出量自体も増えるというのがこれまでの常識となっていた。それが、そうなっていないということが、この表から読み取れる。その原因は明らかだ。日本の産業構造が、輸出中心から海外生産中心へと切り替わっているためだ。

海外生産の果実も、円安の恩恵は受ける。円安に振れれば、海外での売り上げはそれだけ名目所得の増加をもたらすからだ。しかし、海外での売り上げ所得がいくら増えても、それは日本国内の経済にとって、ストレートなプラス効果をもたらすとは限らない。

円安は、輸出企業の名目上の所得を増やし、したがってそれらの企業の株価を上げる効果はあるが、日本経済全体をよくするとは限らない。そのことを、この表は、あらためて教えてくれる。

たしかに円安は、観光産業を活性化するなどの効果はある。しかし、その一方で、輸入価格の上昇を通じて、庶民の暮らしを貧しくする効果も持つ。いまのところ、円安はいいことだとする自称エコノミストの声ばかりが大きいが、実際にはそんな単純なものではないのだ、ということを肝に銘じる必要があろう。






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