ルーブル危機とロシア経済

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最近、ルーブル危機という言葉が聞かれるようになった。ルーブルの下落に歯止めがかからず、今後も一本調子で下げて行くのではないか、という予想がその背景にある。何しろ年初はドルあたり33ルーブルだったものが、一年足らずの間に56ルーブルまで一気に下落した。このまま下落が続けば、ロシア経済は深刻な事態に陥ることが予想される。

下落の原因はふたつある。ひとつはウクライナ危機をきっかけにした欧米との経済関係悪化、もうひとつは世界的な原油安の影響だ。アナリストの中には、前者の影響を強調する者が多く、データも一見それを裏づけているように見えるが、基本的な要因は後者だろう。もしそうだとすれば、欧米との経済関係が良くなっても、ロシア経済が急速に立ち直る可能性は小さい。

ロシア経済はこれまで、原油と天然ガスなど化石資源の輸出に過度に依存してきた。今世紀以降のロシア経済がこれまで順調だったのは、化石資源の価格が高めに安定し、ロシアに巨額の売り上げをもたらしてきたためだ。プーチンの権力基盤は、こうした化石燃料の売り上げに支えられてきたという面が強い。ロシアの国民は、懐が豊かである間は、政権がどのようなことをしてもあまり気にしないという態度を取ってきたものだ。

しかし、化石資源の価格は今後当面の間、低い水準で推移していくだろうと予想される。シェール革命といわれるような、新しいエネルギー源の登場や、再生エネルギーの開発によって、化石燃料の需要が下がる傾向にあることがその大きな要因だ。

こうなると、化石燃料に過度に依存したロシア経済は大きな打撃を蒙りつづけるだろう。ルーブルの下落は、その打撃の深刻さをあらわすインディケータに過ぎない。ロシア経済が今後ますます沈滞していけば、ルーブルの下落は一層進んでいくだろう。その結果、ロシア経済にはパニック的な現象が起こることも十分に考えられる。

ロシアの金融当局は、とりあえず利率のアップなどを通じてルーブルの下落に歯止めをかけようとしているようだが、そううまくはいかないだろう。ともあれ、通貨価値の人為的な下落(デヴァリュエーション)にうつつを抜かしている国があるかと思えば、通貨の価値を何とか維持しようとしている国もあるわけで、これが地球上に時期を同じくして起っていることなのかと、筆者などには感慨深いものがある。









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