地獄草紙2(奈良国立博物館本)

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(糞屎泥)

奈良国立博物館に収蔵されている「地獄草紙」は、詞書と絵を組み合わせた六つの段と、絵のみが残る一段の計七段からなる絵巻である。隋の闍那崛多が漢訳した「起世経」に説かれる十六小地獄を表わしたものである。「起世経」によれば、地獄には八大地獄があり、その周辺には十六小地獄がある。すなわち、(1)黒雲沙(こくうんしゃ)、(2)糞屎泥(ふんしでい)、(3)五叉(ごしゃ)、(4)飢餓(きが)、(5)燋渇(しょうかつ)、(6)膿血(のうけつ)、(7)一銅釜(いちどうふ)、(8)多銅釜(たどうふ)、(9)鉄磑(てつがい)、(10)凾量(かんりょう)、(11)鶏(とり)、(12)灰河(かいが)、(13)斫截(しゃくせつ)、(14)剣葉(けんよう)、(15)狐狼(ころう)、 (16)寒氷(かんぴょう)の小地獄である。奈良国立博物館本の描写する地獄は、(2)(10)(9)(11)(1)(6)(15)の順となっており、順序が入れ替わっている(以上、奈良国立博物館の説明による)

上の絵は、糞屎泥小地獄を描いたもの。生前に、愚かで善悪の分別がつかず、仏法を軽んじた者が落ちる地獄である。悪臭に満ちた糞尿の中で、罪びとたちは「針口」という鉄の虫にさいなまれる。罪びとがみな愚かな顔つきをしているのに対して、虫のほうが利口そうな顔をしているのがミソである。

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(凾量所)

生前、升目の分量をごまかし、不当な利益を得た者が落ちる地獄である。罪人たちは、その報いとして、火で燃え盛る升を持たされる。それを三つ目の獄卒が、罪びとたちがズルをしないように見張っている。獄卒の胸には、しぼんだ乳房が垂れ下がっているところから、女であることが伺われる。

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(鉄磑所)
生前、他人のものを盗んで、うまく逃げおおせた者が落ちる地獄である。罪人たちは、臼の中に投げ込まれ、粉々にされている。獄卒たちの表情は、みな愉快そうに見える。

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