病草紙1:京都国立博物館本1

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病草紙は六道絵の一部として、江戸時代には17図あったことが知られているが、現在ではそのうちの9図が京都国立博物館に収蔵されている。

六道絵の一部としては、人道を描いたのであるとするのが有力な解釈になるが、その場合には、人道は病気に満ち満ちた苦悩の世界であり、解脱してそこから解放されるのを祈るべきだということになる。

しかし、この絵を六道絵の一部ではなく、当時の絵巻説話物の一部だとする見方もある。この見方にたてば、各々の絵には、宗教的な背景はなく、ただ単に、人の病気について、淡々と、あるいは面白おかしく、説話風に解説したものだとする解釈になる。

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(二形)

二形(ふたなり)は両性具有という意味で、一人の人間が男女両性を兼ねていることを意味する。この絵の中では、男女両性具有は、男女それぞれの性器が、一人の人物によって体現されていることとしてあらわされている。

この男女両性具有者は、表向きはむくつけき男の顔をしていることになっている。この男は占い師とされている。その占い師が、大の字に寝そべって股間をさらしており、それを他の男たちが笑いものにしているところが描かれている。見ている我々も、思わず笑ってしまうところだ、と言いたいところだが、それは不謹慎な言い草かもしれない。

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(霍乱の女)

霍乱とは下痢と嘔吐を繰りかえす病気。この絵の中の女も、下痢をしながら嘔吐している。その女を老女が介抱し、別の侍女がお替りの食事を持ってくる。傍らの部屋では一人の女が擂り粉木を摺っている。その対比が何となくユーモラスで面白い。

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(毛虱)

女から毛虱を移された男が、陰毛を剃って毛虱を追い出そうとしている場面。毛虱は毛がないと宿ることができないのだ。移した女のほうはその様子を見て、照れ笑いをしている。

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