安倍晋三総理がエジプトの専制政権に肩入れ

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二度目の中東訪問を行った安倍晋三総理が、手初めに会ったのはエジプトの専制的支配者アル・シーシ大統領だ。安倍総理はまた、エジプトで演説を行い、そのなかで中東の和平と発展のために25億ドル(約2900億円)の援助を行うと約束した。援助先はエジプトに限らず、シリアやイラクも含まれるようだが、アル・シーシといい、シリアのアサドと言い、専制的な支配者として、とかく批判の多い人物だ。それに肩入れしようとするかのような安倍総理の行動は、やはり問題があると言わねばなるまい。

安倍総理が、このような行動をとる理由は何か。中東はつねに欧米諸国の悩みのタネになってきた。なにか事あるたびに、欧米諸国は一堂に会し、その解決のために共同して当たってきたという歴史もある。そうした歴史の舞台では、日本はいつもつまはじきだった。というのも、日本の地政学的な位置が、中東から一定の距離を取らせたからだが、安倍総理には、そのことが面白くないのかも知れない。できれば日本も、欧米諸国と肩を並べる形で中東問題に関わりをもち、大国に相応しい評判を得たい。どうもそんなふうに考えているように受け取れる。

しかし日本は何も、無理に中東から背を向けてきたわけではない。上にも言ったように、地政学的な距離感があったために、日本には必ずしも積極的な介在が求められなかったし、国際的な武力紛争に対する憲法上の制約が日本にあることを諸外国がそれなりに理解してきたということもある。こうしたわけで日本は中東に対して一定の距離をおいて接してきたわけだが、その結果、どの国に対しても中立で公平だというイメージを、中東の諸国から抱かれてきたという側面もある。

ところが安倍総理は、そうした距離感とか平和国家としてのこれまでの自制を一気に取り払って、中東問題に深くかかわろうとする姿勢を示しているわけだ。安倍総理は、それを積極的平和主義の一環として位置づけている。日本はいまや国際社会に責任を持つ国家として、中東の地域的安定に積極的に関わり、「中東の伴走者」として寄与していきたいのだといっている。

しかし、安倍総理が本来力を入れて取り組まねばならないのは、日本が地政学的に直面している東アジアの平和と安定だろう。ところが東アジアにとって、安倍総理はむしろ「不安定要因」そのものとなっている。日本にとって死活的な意味を持つ東アジアでは緊張を高めながら、日本からは遥かに遠い中東の安定に寄与したいなどというのは、殆どナンセンスに近いのではないか。









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