スイスの与党議員が姨捨山構想

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先日、スイスの与党議員が、年金老人などをモロッコの施設に移住させるという、ある種の姨捨山構想を発表して、世界中の失笑を買ったところだが、笑いごとでは済まされないかもしれない。これは極端な例だが、ドイツが隣国のポーランドの施設に老人を入居させるなど、同じような事態が実際に生じており、今後ともこうした傾向が拡大しないとも限らないからだ。日本ではさすがにそこまではいっていないが、たとえば東京の要介護老人が地方の福祉施設に入居している例はある。国内の他府県への収容が許されるなら、外国の施設への収容も許されかねない。

この議員の理屈は、老人を輸出する側の国にも利点があり、また受け入れる側の国にも利点があると言った功利主義的な考えに立ったものだ。ただ、老人本人の意向をどれだけ考慮に入れているのかは、伝わってこない。

今後、老人人口が爆発的に増えて行く傾向は、日本に限らず先進国に共通した悩みだ。なかでも日本の悩みはスケールが違う。このままでは、要介護老人を国内で面倒を見ることが事実上不可能になると考えられる。その際には、老人の居住している自治体内で面倒を見るというのは無論、そもそも日本国内で面倒を見ることも出来なくなる。そうなった際の選択肢は、いまのところ二つくらいしか考えられない。一つは、老人の介護を家族の責任に押し付けて、公で面倒をみることを放棄してしまうこと、もう一つは、外国にその捌け口を求めることだ。

こう整理してみれば、件のスイス人議員の提案も、一概に荒唐無稽とは言い切れないかも知れない。






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