ブラジルのリンチとインドのレイプ

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ブラジルでは、犯罪者に対する私的制裁、所謂リンチが非常に多いという朝日の記事(2月6日付朝刊)を感慨深く読んだ。犯罪を目撃した人々は、その場で犯人を取り押さえ、集団的に暴行を加える、といった事態がやまないのだそうだ。先日は、勢い余って無実の女性がリンチで殺された。33歳の主婦が誘拐の濡れ衣を着せられ、200人以上の人々から暴行されて惨殺されたというのだ。

この背景には、犯罪に対する低い検挙率と、それに対する人々の不満があるという。ブラジルの殺人発生率は人口10万人あたり25.2人で、G20構成国では、南アフリカに次いで高い。一方、殺人犯が逮捕され処罰される割合は、全体の5~8パーセントに過ぎない。これが人々の不満をつのらせ、国が処罰しないのならば、自分たちで処罰するという傾向に拍車をかけているということらしい。

一方、犯罪者が誰からも処罰されず、いわば犯罪のやりどくになっているケースもある。インドにおけるレイプ犯罪がその典型だ。インドでは、レイプが風土病のようになっており、夥しい女性が深刻な被害を蒙っている一方、犯人は検挙されず、泣き寝入りの状態が蔓延していると言われる。

どちらも、人権意識が希薄なことのあらわれだと言える。私的な制裁で罪をあがなわせるというのは、たとえ犯罪が誰の目に明らかであっても、許されるわけにはいかない。まして、デマや憶測に基づいて私的制裁を加えるのでは、法も何もあったものではない。また、レイプが野放しにされているのは、法以前の問題で、人権に対する感覚が国民に欠けていることを物語っている。

ブラジルと言えば、先般ワールドカップを主催したばかりだし、来年はオリンピックを開催することになっている。これから本格的に先進国の仲間入りをしようとしているわけだ。そんな国でリンチが横行しているとあっては、ブラジルを訪れる外国人も安心してはいられないし、第一国として恥ずかしい事態だ。法の支配は、先進国としての最低の条件なのだから、ブラジルは犯罪の取り締まりに国を挙げて取り組み、犯罪者を適正に処罰することで、国民の司法への信頼をつなぎ留めねばなるまい。






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