皇太子の憲法についての発言に対する大手メディアの反応:池上彰氏の指摘

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皇太子が、55歳の誕生日にあたってなされた発言を巡って、大手メディアがそれをどのように報道したか、池上彰氏のコラム「新聞ななめ読み」が取り上げている。このコラムは、とりあえず朝日を主な対象としているので、まず朝日の報道ぶりを紹介している。朝日は、皇太子の「戦争の記憶が薄れようとしている」との認識を示したうえで、「謙虚に過去を振り返るとともに、戦争を体験した世代から、悲惨な体験や日本がたどった歴史が正しく伝えられていくことが大切」と話されたと伝える一方、日本国憲法についての皇太子の発言について触れていないと指摘している。

日本国憲法についての皇太子の発言をまともに紹介しているは毎日新聞で、こちらは、戦後70年を迎えたことについて、皇太子が、「我が国は戦争の惨禍を経て、戦後、日本国憲法を基礎として築き上げられ、平和と繁栄を享受しています」と述べられたことを紹介している。これに対して朝日の対応は、問題意識に欠けているというのが、氏の結論的なところのようである。このコラムが、朝日を主な対象としていることからして、この結論付けは妥当なところと言えよう。

ところで、朝日と毎日以外の大手メディアはどうか。読売、日経、産経の各紙とも、皇太子の憲法についての発言はオミットしているそうだ。ということは、日本の大手メディアで、これをまともに伝えたのは毎日だけだということになる。こう指摘されて筆者は、今の日本の言論を巡る状況に思いを致さずにはいられなかった。

周知のように、安倍政権は憲法に対してマイナスの感情を抱いているようで、できれば全面的に改正したいと考えている。自民党の出している改憲草案を読めば、そんな意気込みが強く伝わって来る。そんな政権の姿勢に遠慮して、大手メディア各紙も、皇太子の憲法をプラスに評価する意見をわざと無視したのではないか。そんなふうにも受け取れる。

皇太子がこのような発言をなされたのは、天皇の憲法擁護義務を定めた憲法99条の規定を考慮されたとも考えられるが、それ以前に、皇太子ご自身に憲法を尊重される強い気持ちがあるからではないか。

そんな皇太子の意思が、安倍政権の憲法軽視の姿勢とぶつかるからといって、日本の大手メディアの多くが、安倍政権に遠慮して皇太子の意思を国民に正しく伝えることをネグったのだとしたら、これは日本の言論の自由をめぐる状況が、思った以上に深刻であることのあらわれだといえる。






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