文官統制の廃止で文民統制は強化される:防衛大臣のヘンな理屈

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文官統制を規定している防衛省設置法12条を改正して、文官統制を廃止する動きについて、メディアから意見を求められた現職の防衛大臣が、これによって文民統制はかえって強化されると答えたそうだ。なぜそうなるのか、また、この規定の歴史的意義をどう考えるのか、という質問に対しては、この大臣は答えをはぐらかした。その理由が振るっている、この法律ができた時には、自分は生まれていなかったので、そんなことは知らないというのだ。

文官統制が、総理大臣や防衛大臣の軍事上の決定に働きかけ、そのことで文民統制の実を上げようとする制度であることは、そう頭を働かせなくともわかるとおりだ。ところがこの大臣は、文官統制を廃止して、所管の大臣が直接制服組の意見を聞いて決定するようになれば、大臣の決定にそれだけ重みが加わり、その結果大臣による文民統制の実も上ると言いたいらしいが、それが屁理屈に過ぎないことは、これもまた、そんなに頭を働かせなくともわかろうというものだ。

文官統制を廃止したいというのは、制服組の長年の念願だった。この防衛大臣は制服組の出身者というから、その立場から、制服組の願いに応えようというつもりなのかもしれない。

しかし、もしそうなれば、防衛大臣や総理大臣は、直接制服組の意見を聞いたうえで軍事的(同時に極めて政治的)な決定をすることになる。制服組としては、それだけ自分らの意見をストレートに反映させる可能性が高まることを意味する。

ということは、文民大臣による制服組の統制というよりは、制服組による文民大臣の統制につながっていくのではないか。

この問題は、政治的な重要性と言う点で、飛び切り大きなテーマだ。それが、たいした議論もなく通されようとしているのは、何とも異常な眺めと言うほかはない。






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