反プーチン活動家ネムツォフの暗殺

| コメント(0)
反プーチンの活動家として世界的に知られていたボリス・ネムツォフ氏が、モスクワの中心部で何者かによって射殺された。3月1日に予定されていた反プーチンの大規模デモの二日前のことだ。現場は、クレムリンに近い橋の上で、散歩していた氏に向かって背後から来た自動車から弾丸が発射され、氏はその場で即死したという。当然のことながら、この暗殺劇は世界中を賑わすことになった。

暗殺の背後にプーチンあるいはプーチンを支持する勢力の影があるのではないか、という推測がまず世界中に流れた。それを打ち消すかのように、プーチンはこの暗殺を非難する声明を出した。自分は全く関係ないばかりか、こうした蛮行には怒りを覚える、というジェスチャーをしたわけだが、いまのところそれを素直に受け取る者は少ない。

ロシアでは、クリミア併合や、それに続く東ウクライナでの衝突を背景に、所謂愛国感情が異常に高まっていた。ネムツォフ氏の活動は、そうした愛国心に水を浴びせるものだとして、暴力的な極右分子の憎悪の標的になっていた。今回の暗殺が、そうした勢力と深い関係を持っているだろうことは、容易に推測される。

現場はクレムリンから歩いてすぐのところだという。周囲には、膨大な数の防犯カメラが設置され、また大勢の警備員が配置されて、プーチンの安全に万全を期していた。だから、そんな場所で、こんな派手な暗殺劇が公然と行なわれるとは考えにくい。しかも、犯人たちは仕事を終えるやただちに現場を(安全に)立ち去っている。これは、警備当局の眼こぼれがない限り、ありえないことだというのが、大方の推測だ。

この事件がロシアの今後の政治にどのような影響を及ぼすか、様々な議論がなされている。最も注目すべきは、この暗殺劇を1934年に起きたキーロフの暗殺劇と比較する見方だ。キーロフの暗殺を契機に、スターリンは次々と政敵の排除に乗りだし、ついには独裁的な権力を確立するようになった。プーチンも同じことを狙っているのではないか、というわけである。







コメントする

アーカイブ