孤立を深めるネタニヤフのイスラエル

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ネタニヤフの米議会演説は、イスラエルの今後にどのような影響をもたらすか。まだ予断はできないが、孤立を深めるものと予想される。ネタニヤフの批判に対して、オバマは「なにも新味はない」といって無視に近い扱いだし、アメリカ国内でイスラエルへの同情が大いに高まったという証拠もないようだ。イスラエルはかえって、中東和平の新たな構想からつまはじきされる恐れさえある。

現在、イランとの間で交渉を行っているのは、米、英、仏、露、中、独の六か国(第二次大戦の戦勝国プラスドイツ)だが、これらの国はアメリカを除いてイスラエルの最近の行動に批判的である。そのアメリカも、オバマ政権がイスラエルに対して厳しい姿勢を取ることになれば、イスラエルの国際的な孤立は一層深まるだろう。

イスラエルを孤立に追いやっているのは、ネタニヤフの余りにも硬直した姿勢だ。対パレスティナ政策は言うに及ばず、対イラン政策についても、現下の国際情勢をまったく無視した独善的な考え方を主張している。その考え方とは、イランを従来通り経済封鎖し、国際社会から締め出すことで、その核開発能力を殺ごうとするものだが、これが、先の六か国の考えと真っ向から対立している。六か国は、イラン政権の穏健派への交代をきっかけに、イランを国際社会の秩序に組み込み、中東の安定要因にしたいと考えているのに、ネタニヤフは、それとは真逆なことを主張していると見られているわけだ。

ネタニヤフの焦りには一定の理由がある。イランが国際社会のメンバーになって、今後国力を充実させていけば、イスラエルにとって潜在的な脅威になる可能性が高い。いままでのイラン政権のように、イスラエルを消滅させるなどとは言わないまでも、いつ何時公然とイスラエルに戦争を仕掛けてくるかもしれない。その時のイランは、いままでのイランと違って、イスラエルにとって手ごわい相手になっている可能性が高い。

要するにネタニヤフは、これまでイスラエルがアラブ(イスラム)世界に対して享受してきた非対称的な優位性が崩れることを恐れているのだと言える。イスラエルにとって、非対称性を打破する能力を持つ国は、今の所イランだ。そのイランが国力を充実させていくことは、ネタニヤフにとって耐えがたいことではあるだろう。しかし、ネタニヤフの言い分は、今の国際社会ではなかなか通じない。

イスラエルが、今後持続可能な国であり続けるには、これまでのような居丈高な姿勢を改め、近隣のアラブ(イスラム)諸国との共存につとめて行くほか道はないと言ってよい。何といっても、隣人を地上から消し去ることはできないわけであるから。






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