メルケル独首相は迷惑な訪問客だったか

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日本国の安部晋三総理大臣にとって、ドイツのアンゲラ・メルケル首相の訪日はいったいなんだったのか。民主主義を標榜する国の首脳同士の関係にしては、両者のやりとりは、ちょっとぎこちないものになった。メルケル首相は、歴史認識や原発再稼動についての安部総理の姿勢を、間接的ながら批判するような言い方を繰り返し、安部首相の面子をつぶすような印象を振りまいた。それに対して安部首相は、大事な相手とあって正面から反発するようなことは慎んだが、内心面白くなかったに違いない。その証拠に、両者が自然な握手をしたという、この手の行事にとって肝心なパフォーマンスが、和やかな雰囲気の中で交わされたという印象がまったく伝わってこない。

メルケル首相の訪日は、七年前にサミットで訪れて以来久しぶりのことだ。この七年間、メルケル首相は中国との関係を重視し、日本とは必ずしも親密とはいえなかった。それが今回、わざわざ日本に来る気になったのは、日本との関係を重視したいという意欲の現われではないか、と日本政府は好意的に受け止め、安部総理もそれに同調していたフシがある。ところが、いざ蓋を開けてみると、メルケル首相は安部総理の政治姿勢をやんわりと批判し、日本が国際社会において重要な役割を果たしていくためには、近隣諸国との関係を良くし、また原発の危険性についてももっとまじめに受け止めるべきだと、安部総理にとっては、あまり聞きたくもないご託宣を述べる結果とあいなったわけである。

もっとも、メルケル首相は、こういうメッセージを安部晋三総理に向かって直接述べたわけではない。安部晋三という人物が、20年前の村山談話発表のときにそれに反発し、その後も、独自の歴史認識を開陳し続けてきたことは、メルケル首相も十分にわかっていたはずである。だから、そういう男に面と向かって反対の意見を述べるのは無駄だと思ったのだろう。安部総理ではなく、日本国民に向かって直接意見を述べたという形になった。それがまた、阿部総理にとっては、癪の種になったことは、十分察せられる。

こんなわけで、今回のメルケル訪日を、どう受け止めたらよいのか、安部政権は無論、日本国民全体も、その意義をもっと深刻に考えたほうがよいかもしれない。少なくとも、迷惑な訪問客だったとして片付けるのは能がないといえよう。





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