イスラエルマフィアがアメリカの立憲主義を揺るがす

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先日はアメリカ議会がオバマ大統領の頭越しにネタニアフ・イスラエル首相を招待し、議会演説の中でオバマを痛烈に批判させた。それは、言いたい放題と言った内容のもので、アメリカ大統領に対する外交的な儀礼に反した行為と言われても致し方のないものだった。この背後には、イスラエルの利害を尊重する米共和党の強い意向があったと言われている。

その共和党の議員たちが今度は、オバマ政権とイランとの間で進められている交渉に正面から異を唱え、もしアメリカとイランとの間で一定の妥結がなされたとしても、共和党はそれを受け入れず、2016年の大統領選で共和党が勝利したら、オバマ政権の締結したものは破棄されることがありうると恫喝した。

これに対してイランが、外交の常識に反した言い分であるのみならず、イランを敵視する者たちの陰謀だと反発したのはともかく、ケリー国務長官も、共和党のやり方は2世紀にわたって続けられてきたアメリカの立憲主義に反するものだと強く批判した。

アメリカの立憲主義では、外交は大統領に一義的な権限がある。大統領が締結した条約等は、議会の同意を経て正式に成立するが、一旦成立した対外的な約束は、遵守するというのが当たり前とされてきた。それを共和党は、自分たちにはオバマの決定したことを遵守するつもりはないと、内外に表明したわけだ。これは、ケリー国務長官だけではなく、誰もがアメリカの立件主義的伝統に反する言動だと受け止めざるを得ないだろう。

共和党のこうした行為が、オバマによる対イラン外交を妨害する意図から出ていることは、当事者が認めているとおりだ。その背景には、アメリカのイスラエルマフィアの動きがある。アメリカがイスラエルに対して強力な庇護者として振る舞ってきた影にはイスラエルマフィアと呼ばれるような、イスラエルの利益を押し通そうとする勢力の動きがあったわけだが、その動きが、イランの問題を巡って噴出した結果が今回の異常な事態となったわけだ。

これまで、アメリカ国内のユダヤ人社会は、どちらかというと民主党贔屓であった。民主党は、ユダヤ人社会からの豊富な資金援助を受けて、選挙を勝ち抜いてきた歴史があると言われる。そのユダヤ人社会を、共和党側が全面的に取り込むチャンスが今だ、そう共和党の議員たちは考えているフシがある。

だから、最近の共和党による、中東問題をめぐる一連の動きは、ユダヤ人社会を一気に共和党贔屓に変えさせるための動きと見てもいいのではないか。ともあれ、共和党は、党派的な利害にこだわるあまりに、アメリカの立憲主義の伝統を揺るがしているのである。





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