市川男女蔵の奴一平:写楽

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(市川男女蔵の奴一平)

「恋女房染分手綱」三立目(一番目狂言の序幕にあたる)から、市川男女蔵扮する奴一平を描いたもの。奴一平は由留木家の家臣伊達与作の家来。主人の与作が若殿から預かった三百両の大金の保存を言いつかったが、お家乗っ取りを狙う奸臣鷲塚八平次とその一派によって奪い取られる。これは、三立目四条が原の場面で、一平が悪党たちに襲われるところを描いたもの。

「赤襦袢」の名で親しまれているこの作品は、赤襦袢一枚を身にまとった奴一平が、刀を構えて悪党たちに向かうところを描いている。眼をむいて口をへの字に結んだ一平の表情にはすさまじい緊張感が感じられる。

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(三代目大谷鬼次の奴江戸兵衛)

一方これは、奴一平に襲い掛かる悪党の奴江戸兵衛を描いたもの。一平の図と共に対をなす。

懐から出した両手を大きく広げ、顔を前に突き出したところは、今にも相手におそいかかって金を奪い取ろうとする迫力満点である。受け身の一平に対して、押し一方の江戸兵衛が一対になることで、絵の鑑賞にも一段と趣が増すというものだろう。

しかしこの絵は、これ一枚でも十分な迫力がある。蝦蔵の竹村定之進の図柄とともに、写楽の大首絵の中でもっとも人気のある作品だ。








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