セザンヌの静物画

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ポール・セザンヌ(Paul Cézanne, 1839 - 1906 )は、生涯に200点以上の静物画を描いた。こんなに多くの静物画を描いた画家は、他にいないのではないか。そんなにセザンヌが静物画にこだわった理由は何だろうか。

セザンヌは画家にしては珍しい理論家で、絵について一定の考え方をもっていて、絵を描くことはその考えを実践することだ、と言うような側面があった。静物画は、そうしたセザンヌなりの考え方を実践する格好の領域であったようだ。

セザンヌが絵を描く上でこだわったのは、対象の再構成とか、色彩の配置ということだった。構図の点では伝統的な遠近法によるのではく、複数の視線が交叉するダイナミックな再構成をめざし、色彩の点でも伝統を超えて、独特の調和の世界を現出しようとした。要するに絵の世界に新たな息吹を持ち込もうとした先駆者としての面を、セザンヌは持っていた、といえよう。

セザンヌが静物画を本格的に描き出すのは1870年代の後半以降のことである。最初は伝統的な様式に従って静物画を描いていたが、1880年代の後半に彼独自の世界を確立し、1890年代の末に至って完成の域に達した、というのが通説になっている。

ここでは、セザンヌの静物画を年代ごとにみることで、静物画を典型にした彼の絵の特徴の変遷を見て行こうと思う。








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