(三代目坂東彦三郎の鷺坂左内)
鷺坂左内は捌き役として、鷲塚兄弟ら悪役とは対照的な役柄だ。これを演じた三代目坂東彦三郎は、和事の上手として知られ、時代物の由良之助や菅丞相などが当たり役だった。この絵からは、理知的で冷静な彦三郎の様子が伝わってくる。
右手で雪洞を抱えているのは、四立目の場面であることをあらわしている。
(岩井喜代太郎の鷺坂左内妻藤波と坂東善次の鷲塚官太夫妻小笹)
左内の妻藤波と、悪役の官太夫の妻小笹を並べて描いたもの。左手の藤波が夫同様に善良そうな顔つきなのに対して、右手の小笹は憎らしい顔つきをしており、いかにも悪人の妻といった感じが伝わってくる。
二人の役者を並べて描いた五点の画のうち、この作品だけは、二人が同じ方向を向いている。
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