舛添都知事の落とし穴:新国立競技場建設問題

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先稿「誰がツケを払うのか:新国立競技場の巨額建設費」で、新国立競技場の建設費用の一部を都が負担する場合には、東京都のみを対象とした特別立法が必要なことに触れたが、もしこうした立法措置をせずに、舛添都知事の計らいで建設費用の一部を負担するとした場合に、どんなことになるか、片山善博氏がシミュレーションしている。(「新国立競技場をめぐるドタバタ」"世界"2015年8月号」

現行の地方財政法は、国の支出の一部を地方が負担することを禁止している。この規定を根拠にして、当該地方自治体の住民は、違法な支出をした公務員について、住民監査請求や住民訴訟を起こすことができる。都の場合には、もしも舛添知事が新国立競技場の費用の一部を負担した場合には、地方財政法違反として、知事個人に、違法に支出した金額を賠償させるよう、監査委員に対して請求することができる。しかし監査委員は、都知事によって任命されたこともあり、その非を認めることは人として忍びないだろう。だから、こうした請求は棄却される可能性が高い。

しかし、これだけでは終わらない。その後には住民訴訟の手続きが控えている。住民監査請求を棄却された請求者は、その案件を裁判所に持ち込むことができるのだ。裁判官は、監査委員と違って、都知事に負い目があるわけではないから、かなり事務的に判断するであろう。片山氏個人の予想では、請求が認められる可能性はかなり高いということだ。

もし請求が認められれば、舛添知事個人に対して、当該肩代わり金額の全額を賠償するよう求める判決が出ることになる。つまり、舛添知事は、たとえ都議会の賛同を得て都の公金で新競技場の建設費用の一部を肩代わりした場合でも、知事個人として、その金額の賠償責任を負わされることになる、というわけである。

そこで、片山氏は、老婆心からか、舛添氏はこうしたことを十分念頭において判断する必要があると忠告している。

当の舛添氏は、当初は建設費用の一部負担を求める国の意向を厳しく批判していたが、どういう事情からか、最近そうした姿勢を和らげて、負担する方向で腹を固めたとの情報が流れた。しかも、その金額が当初の500億円から、800億円までありうるといった、気前の良さまで見せているという。どういうつもりでこういう姿勢転換をしたのか、我々にはわからないが、結果的にひどい後悔をしないですむように、慎重になることが肝要であろう。彼が巨額の負債を背負ったところで、困る人は他にいないのであるし、助けてくれる人もいないだろうから。






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