英誌エコノミストがイタリアの投資会社に売られる

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英誌エコノミストといえば、バランス感覚に富んだ記事で定評がある。筆者も若い頃から愛読してきた。そのエコノミストを実質的に所有してきたイギリスの教育・出版会社ピアソンが、エコノミストグループの株式の大部分をイタリアの投資会社エクソールに売却した。ピアソン社は先日、フィナンシャル・タイムズを日本の日経に売却したばかりで、その際にエコノミストの売却も検討していると報道されていたが、それが早くも実現した形だ。

この売却劇によって、エコノミストの編集方針がどうかわるのか、いまのところ全く分からない。エコノミストは記者個人の署名記事ではなく、チームによる共同の匿名記事が主体であり、組織としての編集方針がものをいうタイプのメディアだ。その組織の体質が、今回の売却劇によって変わることはないのか。

伝統あるメディアが、売却劇を通して没落していった例は、ニューズウィークなどに見られたところだ。エコノミストもそうならないという保証はない。

いまのところ、エクソール社は金儲け以外には興味がないようなので、折角金をかけて買収したエコノミストのメディアとしての価値を進んで毀損することはしないと思うが、長期的にはどうなるかわからない。

現代の世界に健全な言論空間が存在するためには、エコノミストのようなメディアは欠かせない。今後買収元の金儲けに一定の寄与を求められるのは致し方がないとして、伝統ある言論のスタイルを捻じ曲げるような事態は避けて欲しいものだ。





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