アベノミクスの中間成果

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上の図表は、日銀の公式データをもとに英誌エコノミストが作成したものである。2011年初頭以降の消費者物価の動きを表している。黒田体制になって以降上昇傾向を続けた消費者物価は、消費税が8パーセントに引き上げられた2014年4月に一気に上昇速度を速めた後、その年の夏をピークにして下落傾向に転じたことが読み取れる。だが、消費税アップによる影響を除けば、消費税のアップを境にして消費者物価が下落傾向に転じたということがわかる。黒田総裁は、就任時に約束した2パーセントのインフレ基調の実現を、当分先延ばしにせざるを得なくなっている。

この図表からは、今現在の日本の消費者物価の上昇率がゼロになっていることが読み取れる。つまり、実質的には日本経済は再びデフレに陥りつつあるとみることもできる。

一方先日公表された日本の四半期GDPの動きは、4月―6月の四半期で、年率1.6パーセントのマイナスを記録した。これは、日本経済がデフレのみならず、不況局面に陥っていることを示している。

ところが、労働市場を見ると、労働力の需給は、サービス業を中心にして逼迫していると伝えられている。労働力需給のひっ迫と言う事態は、通常は経済の好景気の指標である。経済が好景気で労働力の需給がひっ迫すれば、労働者の賃金は上がり、そのことで消費が拡大、物価も上昇する、というのが経済学のイロハだ。

ところがそうなっていない。労働者の実質賃金は総体としては減少している。実質賃金の減少に加えて、消費税がアップしたことで、労働者世帯の消費意欲も冷え込んでいる、というのが実態だ。

アベノミクスの二本の矢のうち、金融緩和策は、円安効果を招いただけで、実体経済の拡大にはつながっていない。一方、財政出動の方は、効果があがるのは出動した当座の短い期間にとどまり、出動が尻つぼみになるのに応じて、景気も後退するという構図になっている。

以上が、現時点でのアベノミクスの中間成果と言えよう。






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