(化粧美人 大判錦絵)
歌麿には、鏡に映った自分の顔に見入っている娘の後姿を描いたものが多くある。これはその一枚。鏡の中の女の表情よりも、うなじの美しさにポイントを置いている。
後髪の繊細な線も、正面から見たのとは違った美しさを感じさせる。うなじの毛先をいくらか乱れさせることで、髪の美しさをかえって強調している。それに対して、鏡の中の表情には、やや精彩がない。
(名所風景美人十二相 大判錦絵)
名所風景美人十二相と題した晩年のシリーズの一枚。このシリーズは、十二人の美女を、松島や天の橋立など日本の名所十二箇所の風景にたとえたもの。だが、どの絵にどこの風景をたとえたのか、については記していない。
これは、針の穴に糸を通そうとして無心になっている娘を描いたものだが、針仕事がどこの名所に結びつくのかは、わからない。
それを別とすれば、娘の何気ない仕草が生き生きと描かれている一枚である。
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