人のためにやることが大事だ:大村智氏のノーベル医学賞受賞の言葉

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ノーベル医学生理学賞を受賞した大村智氏が受賞の言葉の中で、「私自身は微生物がやってくれた仕事を整理しただけ。科学者は人のためにやることが大事だ」と語ったそうだ。大村氏の業績は土などの中に含まれる微生物の力を活用して家畜や人間の病気を治す薬を開発することだったので、「私自身は微生物がやってくれた仕事を整理しただけ」という言葉になったのだろうと思う。

しかしそうした微生物の自然の力を病気の治療と言う目的に向って整理するということはそう簡単なことではない。その簡単でないことを実現するためには並大抵でない努力が必要だ。死はそうした自分の努力を一応棚上げして、微生物の力に敬意を表して見せた。氏の謙虚な人柄が伝わって来るところだが、もっと自分に対して誇りを持っていいのかもしれない。

一方後段の「科学者は人のためにやることが大事だ」という言葉は、世界中の科学者はもとよりすべての人にとって肝に銘じるべきものだと思う。人はいうまでもなく人と共に生きるものだから、人のためにやるというのは、人として最も大切な心がけだと言える。その大切な心がけを氏は何気ない言葉で表現したのだと受け取れる。

今の世界はどんな時代よりも「金のためにやる」という姿勢が跋扈している。価値の尺度を図るのは、人間にとってどれほどの貢献をしたかではなく、どれほどの金儲けをもたらしかかという基準によって図られる。そんな基準からは人間に対する配慮は期待できない。

氏はそうではなく、人間に対する配慮こそが人間にとって最も大事なことなのだという当たり前のことを、肩肘張らない普通の言葉で表現したのだと言える。

氏の謙虚で智恵に満ちた言葉に敬意を表したい。






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