イタリア紀行その十:ミケランジェロ広場、サンタ・クローチェ教会

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レストランを出でてミケランジェロ広場に向ふ。文子を先に立てて歩み行くに、彼狭隘な坂道を選びて上る。かなり急勾配にて息が切れるほどなれど両側に展開する光景は一見に値せり。暫時して小高き丘の上に立つ。丘の入口に一の門あり。地図にて確かむるにジョルジョ門とあり。門の傍らにはベルヴェデーレ要塞あり。どうやら余らは道を一筋間違へたるが如し。ミケランジェロ広場は別の丘の上にあり、そこへ行くには一旦谷に下りてまた上る要あり。

かくて今度は坂道を下って一旦谷に下り、そこより別の坂道を登ってやうやくミケランジェロの広場に立ち得たり。広場はアルノ川を見下ろす所にあり。アルノ川の向側に広がるフィレンツェの街並を一望することを得る。左手にはドゥオーモの半球、更にその左にはサンタ・マリア・ノヴェッラの尖塔、そして右手にはサンタ・クローチェの尖塔を望む。頗る壮観なり。余当然この光景をカメラに収めたるなれど、どういふわけか操作を誤り映像を失ひたり。

ミケランジェロ広場を下りてアルノ川のほとりに出る。途中路上に土産物を売る者あり。黒人なり。看板には一個につき三ユーロ、二個につき五ユーロと表示す。余そのなかの一つを取って三ユーロを与ふ。黒人その金をポケットに納むるも商品を渡そうとせず。なにやら説明をしをるなれど、どうやらこれは五ユーロといひたげなり。余看板をさして一個につき三ユーロたるべしと反論せしがその意伝はらず。つひに購買を止めて金の返却を求めたるところ、黒人大いに憤慨して襲ひ掛からんとす。余身の危険を感じたるほどなり。結局三ユーロの回収に成功してその場を去る。

ヴェッキオ橋の東に架かるグラツィエ橋を渡りサンタ・クローチェ教会に至る。美しきファサードを持ちまたゴシック式の尖塔を有す。堂内にはミケランジェロ、マキャベッリ、ガリレオなどの墓あり、またファサードの左隣にはダンテの肖像立てり。フィレンツェにて最も重要な教会との評判もむべなるかなといふべし。

教会前の広場には多くの露店土産物を並べてあり。余その一つにて家人のために絹のスカーフを買ひ求めたり。

広場前にてタクシを拾ひアカデミア美術館に向ふ。休館してあり。隣接するサン・マルコ美術館も開館時間を過ぎぬとて閉館してあり。カヴール通りをドゥオーモ方面に向かって歩きドゥオーモ広場からチェレッターニ通りを経てサンタ・マリア・ノヴェッラ教会に至る。途次路傍のバルにてサンドイッチを買い求め帰路車中の夕餉になさんとす。

列車の出発まで間があるとて教会の内部を見物す。広大なる礼拝堂の壁面に数多くの絵画の架かれるはサンタ・クローチェ教会と同様なり。見物後駅近くの喫茶店にてコーヒーを飲み、出発時刻の三十分ほど前に駅構内に至る。ホーム手前の電子掲示板にて出発ホームを確認せんとするになかなか表示されず。出発時刻に至ってやうやく表示されたればあはててその方向へ走る。車両は一号車にて列車の先端なれば長い距離を走らされたり。

帰路の座席は一号車、日本のグリーン車に相当す。日本にて事前にネット購入したるなれど往路の二号車の価格二人分六十八ユーロに対してこちらは二人分五十八ユーロなり。イタリアの新幹線は複雑な割引制度を有しかかることも十分におこりうるなり。ともあれ日本のグリーン車よりも快適な空間にて無料のドリンクサービスまであり。車内フィレンツェの街角にて買ひ求めしサンドイッチを食ふほどに列車は一時間ほどしてローマ・テルミニ駅に到着せり。

テルミニ駅より歩いてホテルに戻る。途次スーパーにてビールを買ひ求む。





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