ネタニアフの歴史修正:ホロコーストはパレスティナの発案だ

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イスラエルのネタニアフ首相が、ナチスによるユダヤ人のホロコーストについて、新しい見解を披露して話題を呼んでいる。このホロコーストは、そもそもヒトラーの発案によるものではなく、パレスティナの指導者がヒトラーに焚きつけたというのだ。ヒトラーが考えていたのはドイツからのユダヤ人の追放に留まっていたのであったが、1941年にヒトラーと会見したパレスティナの指導者アミーン・フサイニーがユダヤ人の殲滅を進言し、それにもつづいてヒトラーの考えが変ったというのである。

ネタニアフはこの見解を、世界シオニスト会議の席上でぶったばかりでなく、21日にドイツを訪問した際に、メルケル首相にも伝え、できうれば同意を得たかったようだ。メルケル首相は、ネタニアフからの思いがけない申し出に驚いたらしく、彼の言い分に同意しなかったのは無論、ホロコーストの責任はドイツが負うと改めて確認せざるを得なかった。

ネタニアフとしては、ホロコーストの責任をパレスティナ人にかぶせることで、ドイツの道義的責任を軽くしてやるかわりに、自分たちが行なっているパレスティナ人へのホロコースト行為を大目に見てもらいたかったのだろう。しかし、ユダヤ人へのホロコーストがナチスによって行われたのは歴史的な事実として確立しているし、いまさらそれを修正しようとするのは、国際的な同意を得られない無茶苦茶な行為である。ましてやパレスティナ人にホロコーストの責任をかぶせることで、自分たちのパレスティナ人へのホロコーストを合理化できるものでもない。

人間の記憶というものは、時間の経過とともに薄れていくのは仕方のないことだ。歴史を修正しようという動きは、そうした人間の弱さにつけこんだ企みと言える。しかし歴史修正主義は、あったことをなかったことにするというのが普通で、ネタニアフのように、なかったことをあたかもあったことのように言い募るのは珍しい。

ともあれ今回のネタニアフの言動からは、彼に体現されたユダヤ人の反パレスティナ感情が露骨に伺える。彼らは、できうればパレスティナ人を地球から殲滅したいと考えており、その希望が、パレスティナ人殲滅を正当化する理屈を求めさせているのだろう。だが、パレスティナ人をこの世から殲滅することなどとてもできることではない。また、今の時点では、イスラエル国家の対パレスティナ関係は非対称的なものとなっており、その限りでイスラエルはパレスティナ人に対してしたい放題のことができている。だがそんな関係が未来永劫続くと思うのは夢想というものだろう。自ら憎しみのタネを播いたものは、自らその取入れを行なわねばならない。イスラエルのユダヤ人は、自分の立場というものを、もっと冷えた頭で考えるがよい。







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