ドナルド・トランプが水攻め拷問必要論を展開

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ドナルド・トランプの勢いが止まらない。共和党の大統領候補としての支持率は32パーセントとなり、二位のベン・カーソンに10ポイントの差をつけている。この調子だと、来年の大統領選に共和党候補に収まる可能性が非常に高いばかりか、場合によっては民主党の候補者を破って合衆国大統領に選出されるのも、あながち絵空事でなくなった。

トランプの勢いを支えているのは、その率直な舌まわしだ。最近は、パリでの大規模テロを踏まえて、これまで拷問だとして非難されていた水攻めを、捜査の方法として復活させることを主張している。イスラムの過激派が行なっていることに比べれば、水攻めは取るに足らないことだし、テロリストに吐かせるのに効果があれば躊躇なく実施すべきだという理屈だ。

水攻め拷問は、ブッシュ政権下に対イラク戦争に付随して用いられたことが強い批判を招き、オバマがこれを禁止してきた経緯がある。だが、ブッシュの副大統領だったチェイニーは、水攻めは必要かつ有効な捜査方法だとして擁護した。というのも、この捜査手法は、ブッシュ時代だけに特有のものではなく、アメリカの警察では伝統的な方法として広く認められてきた経緯がある。ベトナム帰還兵のアメリカ警察との軋轢を描いた「ランボー」という映画でも、警察官がランボーを懲らしめる手段として、全裸にしたうえで水をぶっかけるシーンが出て来るが、この映画でわかるとおり、水攻めは物理的な苦痛と共に、精神的な苦痛を与えるものとして、非常に便利な方法なのである。

トランプは、それを復活させて、イスラム過激派の容疑のかかった人間に対して行使しようというわけである。その言うことを、素直に聞いていると、単に捜査上の必要というにとどまらず、けしからぬ奴を懲らしめてやろうという意欲が伝わって来る。

こういう物言いは、白人層を中心にしたアメリカの保守層には非常に受けるらしく、過激なことを言えば言うほど、トランプの株が上るという構造になっている。これは、良い悪いを別にして、アメリカの今日の精神状況を非常によく表している光景なのではないか。
  





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