豊穣たる熟女たちと割を食う:船橋「梅の花」にて

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豊穣たる熟女たちと新年会をやった。場所は船橋にある豆腐料理屋のチェーン店「梅の花」。五時過ぎにJR船橋駅の改札口前で待ち合わせ、四人揃ったところで店のある東武デパートのエレベータ乗り場に向かう。筆者を先頭に人込を掻き分けて進み、エレベータ乗り場に近づいて後ろを振り向くと誰もいない。はてどうしたことかとあたりを見回したが、なんの痕跡も見当たらない。たった数十秒の短い間に、成熟した女性が三人も忽然と姿を消してしまったのだ。

仕方なく、待ち合わせ場所の改札口近くに引き返し、そこで彼女らが戻ってくるのを待った。お互いはぐれたことに気づけば、彼女らも待ち合わせ場所に戻ってくるだろうと思ったのだ。ところがなかなか戻ってこない。生憎携帯電話を家に忘れてきたので、連絡の取りようもない。しばらくイライラしながら待っていたが、三十分待っても現れないので、ついにあきらめることとして、店に赴いてキャンセル手続をとろうと思ったところが、コンコースに佇んでいる彼女らを見つけた。いったいどうしたのかね。小生の後について来なければだめじゃないか。突然いなくなってしまったので、神隠しにあったかと思ったよ。

こんなわけで一時はどうなることかと思ったが、なんとか宴会の席につくことができた。今夜は豆腐料理のフルコースで、豆腐のほか湯葉や油揚げの類しか出てこないが、たまには精進料理を食うのも美容の為だと思って味わいなさい。そういいながら乾杯した。

三人とも顔色がいい。前回会ったのは去年の初夏で、その折には三人三様体のどこかに不調を抱え、顔色も冴えなかったのを覚えているが、今日は三人とも心身ともに好調だと言う。特にM女は、この前は疲労困憊とかでげっそりやせ細っていたが、今夜は大分いい顔つきをしている。もっとも寄る年波は隠しようもないが。本人が言うには、こんな年でもまだ働く気力はなくならないし、会社もまだ雇ってくれるといいますので、気力の続く限りは働くつもりです、と。T女は、この三月いっぱいで引退するつもりでいましたが、会社のほうでもう少し働いたらといいますし、気力も体力もまだありますので、もう一年やろうと思いますと言う。Y女は、フルタイムの勤務からパートタイムになって、大分負担が減りましたので、もう少し続けようかと思いますと言う。みなさん働き続けるのは元気な証拠だから、これはとてもよいことだと言ってあげた。

歓談の中身はあいかわらず取りとめもない。今夜は場所中の相撲のことに話題が及んだので、おすもうさんのセックスアピールについて話してみた。最近読んだ本の中に、こんなことが書いてあった。相撲取りは銀座のホステスには大変人気がある。そのわけは、相撲取りの体が非常に柔らかいので、抱き合うのに都合が良いのだと言う。一度相撲取りとやると病みつきになる、癒されるからだ。こんな話を披露したら、あなたも最近ふっくらとしてきたようですけど、お相撲さんを真似してセックスアピールをするつもりなの?と冷やかされた。

豆腐の料理が次々と運ばれてくる。食うのが追いつかないほどだ。食っている先から皿を片付けて、次の料理を運んでくる。それが余りせわしないので、もう少しゆっくりさせよと給仕に言ったところが、後のお客さんがありますので、急いでいるのですと言う。おいおい、この席に時間制限があるなんて聞いてないぞ。そう言ったところが、今度は責任者を名乗る別の女が出てきて、もう時間ですと言う。そこで筆者は、予約したときには時間制限があるとは聞かなかったし、これまで何回となくこの店を利用したがそのたびに時間制限をされたことはなかった、先日は銀座の姉妹店で宴会をやったが、その時にも時間制限を受けなかった。何故今回は時間にうるさいのか、と問いただしたのだが、相手はロクな説明をしようとせず、とにかく早く出て行けといった態度を示す。その不遜さには、日頃温厚な筆者もさすがにカチンときたが、筆者にはクレーム趣味はないので、ことを荒立てずに辞去した。

地面の上に降りて、駅ビル地下のさる喫茶店に入った。あなたたちには不愉快な思いをさせて申し訳なかった、と言うと、何もあなたが悪いのではないのだから恐縮することはありませんわと慰めてくれる。この喫茶店で気分を持ち直し、時間不足でしゃべり足りないところを、熟女たちにそれぞれしゃべってもらった次第だ。

そのおしゃべりの中で、我々団塊の世代の未来が話題になった。これから年寄りばかりが増えて、若い人が少なくなる、そうなると、わたしらも若い人達から邪魔者扱いされるようになるのではないか、それが心配ねと言うから、年寄りには年寄りの生き方があるさ、その年寄りらしい生き方を通じて社会に貢献すれば、若い連中に邪魔者扱いされないと思うよ。貢献の仕方は、それぞれ自分で工夫すればよい。ところで、今の政権は戦争好きなことだから、いづれ近いうちに中国あたりと戦争を始めるかもしれない。そうなったら、我々老人も積極的にお国のために働く機会が出来ると言うものだ。これからの戦争は、若い兵士でなければ戦えないということはない。老人でもやれることはいっぱいある。小生にしても、まだまだ知力と体力が残っているし、ゼロ戦の操縦くらいは出来ると思う。だから、ゼロ戦に乗って、中国の軍艦に体当たりし、大いに戦功をあげれば、自分にとっては名誉なことだし、国にとっては厄介払いになる。こんなにいいことはない。あなた方女だって、戦争でやれることはいくらでもある。たとえば飯炊きとかね、と言ったところが、熟女たちが口を揃えて言うには、飯炊きくらいならまだしも、慰安婦にされるのはいやだわあ。

帰宅後念のために、ネットで「梅の花」のサイトを開いて、時間制限の有無について確認したところが、どこにもそんな記述はない。やはりあの責任者を名乗る女は、根拠もなく客を愚弄していたのである。我々としては、豆腐を食いに行ったつもりが、割を食わされたというわけである。





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