剣を持つホメロスと従者たち:ブレイクの「神曲」への挿絵

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眠りから目覚めたダンテは、自分たちが三途の川を渡り終えて、地獄の淵に立っていることに気づく。ダンテはヴィルジリオに導かれて地獄の第一圏に立ち入った。地獄は漏斗状になっていて、上から順に九つの圏に別れており、次第に底のほうへ下降していくというイメージになっている。

この第一圏には、キリスト以前に死んだ人々や異教徒が住んでいる。彼らは、悪い行いはしていないのであるが、キリスト教の洗礼を受けていないがゆえに、地獄の第一圏に置かれているのである。

そこでダンテたちは、キリストが生まれる以前に死んだ偉大な人々と出会うこととなる。最初に彼らが会ったのはホメロスだった。ホメロスは片手で剣を持ち上げ、お供の人々を従えていた。ダンテとヴィルジリオもそのお供に加えられる。


 汝學藝のほまれよ、かくあがめをうけてそのさま衆と異なるは誰ぞや
 彼我に、汝の世に響くかれらの美名はその惠みを天にうけ、かれらかく擢んでらる
 この時聲ありて、いとたふとき詩人を敬へ、出でゝいにしその魂はかへれりといふ
 聲止みしづまれるとき我見しに四の大いなる魂ありて我等のかたに來れり、その姿には悲しみもまた喜びもみえざりき
 善き師曰ひけるは、手に劒を執りて三者にさきだち、あたかも王者のごとき者をみよ
 これならびなき詩人オーメロなり、その次に來るは諷刺家オラーチオ、オヴィディオ第三、最後はルカーノなり
 かの一の聲の稱へし名はかれらみな我と等しくえたるものなればかれら我をあがむ、またしかするは善し
 我はかく衆を超えて鷲の如く天翔る歌聖の、うるはしき一族のあつまれるを見たり
 しばらくともにかたりて後、かれらは我にむかひて會釋す、わが師これを見て微笑みたまへり
 かれらはまた我をその集のひとりとなしていと大いなる譽を我にえさせ、我はかゝる大智に加はりてその第六の者となりにき(地獄篇第四曲から、山川丙三郎訳)


絵は、地獄の縁(リンボ)に立つホメロス。ホメロスと雖も、キリストによる祝福と信仰に預からなかったものは地獄に一旦送られるが、彼らはそのまま永遠に地獄にいるのではなく、やがて来るべき招命を待ちながら、待機しているとされる。

なお、この絵には、地獄を真上から見たイメージが描かれている。地獄は漏斗状に地球の底へ向かって開き、漏斗の壁に添うようにして、らせん階段状に下っていくというイメージだ。







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