預言者エレミア:ミケランジェロ「システィナ礼拝堂天井画」

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システィナ礼拝堂天井画は、創世記からとった九つの場面からなるシリーズを縦軸(東西軸)に添って並べたうえ、その周り(すぐ外側に接した部分)を預言者及び巫女の画像で囲んでいる。南北にそれぞれ五図づつ、東西にそれぞれ一図づつ、合計十二図である。内訳は預言者が七図、巫女が五図である。

「預言者エレミア」は、祭壇側(東側)からみて左手(南側)の一番手前に描かれている。

エレミアは、旧約聖書の中の「列王記」、「エレミア書」、「エレミアの哀歌」の作者とされている。「列王記」はダヴィデとソロモンによるイスラエル人国家の黄金時代とその後の南北分裂の時代をテーマにしたものだ。エレミア自身は南のユダ王国に生まれ、神によって預言者として招命された。彼はユダ王国の人々が信仰を失っていることを嘆き、悔い改めよと呼びかけた。そして悔い改めない限り滅亡は免れぬと言った。ユダ王国がバビロン捕囚によって滅びたのは、エレミアの予言が実現したのだと言われる。

ミケランジェロはエレミアを、沈思黙考している姿であらわした。システィナ礼拝堂のなかの預言者と巫女は、聖書と思われる書物か巻物を持った姿で描かれているのがほとんどなのだが、このエレミアとヨナは聖書を手にしていない。ヨナの場合には、伝説がいうところの鯨に飲まれた話がテーマになっている関係で聖書が省かれたと思われるが、エレミアの場合には、彼の余りにも深い嘆きがこのようなポーズをとらせたのだろう。

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エレミアの背後にいる人物(女性と思われる)も深い嘆きを湛えた表情をしている。







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