ケルベロス(その二):ブレイクの「神曲」への挿絵

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怒り狂うケルベロスをヴィルジリオが手なづけると、ダンテは、フィレンツェの人チャッコに話しかける。するとチャッコは、フィレンツェに降りかかるであろう凶事について予言し、また、ダンテが会いたいと望んでいる人々がどこにいるか教えてくれた、

チャッコと別れたダンテとヴィルジリオは、さらに次の圏に向って進んで行く。その道すがら、ヴィルジリオはダンテに向かって、最後の審判の後に、それらの人々にどのような運命が待ち受けているか語る。

やがて第四圏に下降する地点にさしかかると、前方に恐ろしいプルートの姿を目にする。


 我等ははげしき雨にうちふせらるゝ魂をわたりゆき、體とみえてしかも空なるその象を踏みぬ
 かれらはすべて地に臥しゐたるに、こゝにひとり我等がその前を過ぐるをみ、坐らんとてたゞちに身を起せる者ありき
 この者我にいひけるは、導かれてこの地獄を過行くものよ、もしかなはゞわが誰なるを思ひ出でよ、わが毀たれぬさきに汝は造られき
 我これに、汝のうくる苦しみは汝をわが記憶より奪へるか、われいまだ汝を見しことなきに似たり
 然れど告げよ、汝いかなる者なればかく憂き處におかれ又かゝる罰を受くるや、たとひ他に之より重き罰はありともかく厭はしき罰はあらじ
 彼我に、嫉み盈ち盈ちてすでに嚢に溢るゝにいたれる汝の邑は、明き世に我を收めし處なりき
 汝等邑民われをチヤッコとよびなせり、害多き暴食の罪によりてわれかくの如く雨にひしがる
 また悲しき魂の我ひとりこゝにあるにあらず、これらのものみな同じ咎によりて同じ罰をうく、かくいひてまた言なし
 われ答へて彼に曰けるは、チヤッコよ、汝の苦しみはわが心をいたましめわが涙を誘ふ、されどもし知らば、分れし邑の邑人の行末
 一人だにこゝに義者ありや、またかく大いなる不和のこゝを襲ふにいたれる源を我に告げよ
 かれ我に、長き爭ひの後彼等は血を見ん、鄙の徒黨いたく怨みて敵を逐ふべし 
 かくて三年の間にこれらは倒れ、他はいま操縱すものゝ力によりて立ち
 ながくその額を高うし、歎き、憤りいかに大いなりとも敵を重き重荷の下に置くべし
 義者二人あり、されどかへりみらるゝことなし、自負、嫉妬、貪婪は人の心に火を放てる三の火花なり
 かくいひてかれその斷腸の聲をとゞめぬ、我彼に、願はくはさらに我に教へ、わがために言を惜しむなかれ
 世に秀でしファーリナータ、テッギアイオ、またヤーコポ・ルスティクッチ、アルリーゴ、モスカそのほか善を行ふ事にその才をむけし者
 何處にありや、我に告げ我に彼等をしらしめよ、これ大いなる願ひ我を促し、天彼等を甘くするや地獄彼等を毒するやを知るを求めしむればなり
 彼、彼等は我等より黒き魂の中にあり、異なる罪その重さによりて彼等を深處に沈ましむ、汝下りてそこに至らば彼等をみるをえん
 されど麗しき世にいづる時、ねがはくは汝我を人の記憶に薦めよ、われさらに汝に告げず、またさらに汝に答へず
 かくてかれその直なりし目を横に歪め、少しく我を見て後頭をたれ、これをほかの盲等とならべて倒れぬ・・・

 たとひこの詛ひの民眞まことの完全まつたきにいたるをえずとも、その後は前よりこれにちかゝらむ 
 我等迂囘してこの路をゆき、こゝにのべざる多くの事をかたりつゝ降るべき處にいたり 
 こゝに大敵プルートを見き(地獄篇第六曲から、山川丙三郎訳)


前葉に続きケルベロスを描く。ケルベロスの足もとには、貪欲者の亡霊たちがうめき苦しんでいる。







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