ワシントンポスト社説が共和党員にトランプ不支持を呼びかけ

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米紙ワシントンポスト(WP)が社説で共和党員に向かって、トランプを大統領候補に選ばないよう、彼への不支持を訴えた。理由は明確だ。トランプのデマゴギーは共和党の伝統を破壊するというものだ。これは日本で言えば、大新聞の社説が、自民党の党員に向かって、安倍晋三が自民党のよき伝統を破壊しているという理由で、彼への不支持を訴えるようなものだ。日本でそんなことをしたら、どんな騒ぎになるか、いうまでもない。ところが、アメリカでは名指しされた当のトランプを含めて、これを問題視して弾劾する動きは見られないようだ。彼我の政治文化の差異を考慮しても、今回のWP紙の態度は、非常に示唆に富んだことだといえよう。

トランプはいまや破竹の勢いだ。このままでは共和党の大統領候補になることが現実味を帯びて来たばかりか、もしかしたら合衆国大統領になる可能性も否定できない。そんな動向を前にして、どちらかと言えば穏健保守の論陣を張っているWP紙が深刻な危機難を抱いたということらしい。トランプの思想は過激そのもので、穏健を旨とする立場から最も遠いところにある。したがって穏健派の代表を任じるWP紙が、危機感を抱くのも無理はない。

トランプは過激な発言をするたびに支持を伸ばしている。今や彼の言葉に驚くものはほとんどいないといった有様だ。WPを始めアメリカの大手メディアは、トランプはいずれ自ら墓穴を掘って脱落するだろうとタカをくくり、トランプを表だってたしなめることを怠ってきた。それはトランプを批判すると、それに何十倍にも増した報復を受けることに嫌気を感じたからだと考えられる。日本のメディアがこわもてのデマゴーグに弱いのと同じような現象と見る事が出来る。それを見定めた形でトランプは言いたい放題のことを言ってきた。彼には、自分の発言が米国の利益にどう跳ね返って行くのか、まったく関心がないらしい。

今回のWPのようなことを、たとえば日本の大新聞が行なったら、政権側から政治的に偏った態度だとして、徹底的に弾圧されるだろう。それがアメリカでは、政治的な弾圧を恐れず意見を表明できているわけだ。民主主義とはどういうものか、その手本をアメリカが示したわけで、日本人の一人として非常に考えさせられる。

(参考)GOP leaders, you must do everything in your power to stop Trump :WP





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