命運の女神:ブレイクの「神曲」への挿絵

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第四圏は、財貨を貯めるものと浪費する者とがいがみ合っているところ。彼らの運命を左右しているのは命運の女神である。そこで命運の女神について、その特徴が語られる。

なお入口にいるプルートーが唱えている呪文が、何を意味するかは不明である。プルートーは、ローマ神話では冥界全体の王ということになっているが、ここでは第四圏の番人とされている。


 子よ、汝いま知りぬらん、命運に委ねられ、人みなの亂の本なる世の富貴のただ苟且の戲を 
 そは月の下に今ありまた昔ありし黄金ことごとく集まるともこれらよわれる魂の一にだに休みをえさすることはよくせじ
 我彼に曰ふ、師よ、さらにいま我に告げよ、汝謂ふ所の命運とはこれいかなるものにて斯く世の富貴をその手の裡にをさむるや
 彼我に、あゝ愚なる人々よ、汝等を躓かすは何等の無智ぞや、いざ汝この事についてわがいふところのことを含め
 夫れその智萬物に超ゆるもの諸天を造りてこれに司るものを與へたまへり、かくて各部は各部にかゞやき   
 みな分に應じてその光を頒つ、これと同じく世にありてもまたその光輝をすべをさめ且つ導く者を立てたまへり 
 このもの時至れば空しき富貴を民より民に血より血に移し人智もこれを防ぐによしなし
 此故にその定にしたがひて一の民榮え一の民衰ふ、またその定の人にかくるゝこと草の中なる蛇の如し
 汝等の智何ぞこれに逆ふことをえん、彼先を見て定めおのが權を行ふことなほ神々のしかするに似たり
 その推移には休歇なし、已むなきの力かれをはやむ、その流轉にあふもの屡々出づるも宜なるかな
 彼を讚むべきもの却つて彼を十字架につけ、故なきに難じ、汚名を負はしむ
 されどかれ祝福をうけてこれを聞かず、はじめて造られしものと共にこゝろよくその輪を轉らし、まためぐまるゝによりて喜び多し
 いざ今より我等は尚大いなる憂ひにくだらん、わが進みしとき登れる星はみな既にかたむきはじむ、我等ながくとゞまる能はず


命運の女神が地獄の第四圏から人々の運命を左右している様子がイメージ化されている。







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