オバマのレームダック化を狙うGOP

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オバマ大統領が米議会に提起している連邦最高裁の人事案件について、多数派のGOP(共和党)がノーを示している。オバマ大統領の任期がもう少しで切れるため、新大統領が選出されてからにすべきだという理由からだそうだ。

この主張の背景には二つの事情があると思われる。一つは、オバマの推薦している人物メリック・ガーランドが、かなり左寄りのリベラルで、共和党には我慢できないという事情だ。9人からなる連邦最高裁の判事のうち、いま在職中の判事は8人で、その内訳はリベラルと保守が半々だ。これにリベラルのガーランドが加わると、最高裁の判断がずっと左寄りに傾く恐れがある。そこで、来年まで棚上げにすることで、GOPの大統領のもとでの仕切り直しを狙っているということらしい。

もう一つの理由は、オバマのレームダック化だ。アメリカの大統領は、普通は二期目の任期の後半以降は政治的な求心力を失いレームダックする傾向があった。レームダック化が進むことで、彼が所属する政党も影響力を弱め、次の大統領選挙では苦戦するか敗北することが多かった。ところがオバマに関しては、なかなか人気が落ちないばかりか、政治的な実績の積み上げまでやっている。今回のキューバへの歴史的訪問などはその最たるものだ。このままだと、オバマの属する民主党も次の選挙を戦いやすくなるだろう。

GOPとしては、それは最悪のシナリオだ。そこでなんとかオバマにケチをつけて彼の政治的な決断を制約し、出来れば完全にレームダック化したい。それには、連邦最高裁判事の人事案件は非常に大きな切り札になる。アメリカにおいては、司法の独立と連邦最高裁判事の権威は非常に強固なものがある。連邦最高裁判事には、一度就任すれば、どんな政治的な圧力にも屈しない終身身分が保証されている。

そこでこの問題でオバマを追い詰めることで、彼の政治的影響力が無くなっていることを衆目にさらし、一気にレームダック化を図りたい、というのがGOPのより強い願いらしい。もっともいまのところ、今年の大統領選でGOPが勝つという見込みはあまり強くはない。ヒラリーが大統領になる可能性の方が強い。もしそうなったら、ガーランドより更に左巻きの人物を提起するかもしれない。そうなったら、それはそれで対応するよ、ということらしい。

ところでキューバを訪れているオバマに対して、カストロ首相はかなり強気な態度で出ていると伝えられている。今回の両国関係改善の動きは、オバマのほうから出て来た話だし、その背景には、キューバとの軍事的提携を模索する中国の動きにオバマが強い危機感を抱いていた、ということがある。そういう事情をカストロが呑み込んでいるから、そんな対応になっているのだと思う。





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