市場原理主義者にもしゃべらせよう:安倍政権のバランス感覚

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安倍政権が立ち上げた「国際金融経済分析会合」に、スティグリッツ博士に続いてハーヴァード大学のジョルゲンソン教授を招き発言させた。このジョルゲンソンなる人物のことを筆者は詳しくは知らないので、あまり突っ込んだことも言えないのだが、その発言を聞いた限りでは、どうやら市場原理主義者の類に属するようだ。今の時勢に、経済を活性化するために投資を拡大する必要があり、そのためには投資減税をする一方、財政規律を保つために消費増税をするべきだといっているところからそう判断される。

ともあれジョルゲンソンは、スティグリッツ博士とは全く違うことをいっているわけだ。このように正反対のことを言わせるというのは、安倍政権なりのバランス感覚のあらわれなのかもしれない。だが、ジョルゲンソンの言っていることは、安倍政権のやっていることと親和性がある。

ジョルゲンソンは、不況の克服は生産力の拡大で乗り切れると考えているようだ。要するにサプライサイドの考え方だ。安倍政権も同じように考えているフシがある。経済の活性化のためにはなによりも生産性をあげることが大事なのであって、そのためにも投資減税をすすめる必要があると繰り返しているところにそれがあらわれている。一方、消費税の増税は、財政規律と言うよりは、福祉の水準を維持するためだと言い訳している。

ところがジョルゲンソンは、投資減税で穴があいた部分を埋めるために消費増税をすべきだと言っているわけだ。企業に儲けさせてやれば経済は自然に拡大し、その恩恵を貧乏人も受けることができる。所謂トリクルダウンの理屈だ。トリクルダウンの恩恵に与るためには、貧乏人は目先の負担を甘受すべきだ、と言いたいわけであろう。

安倍政権はそこまで露骨なことは言わない。というか、今の日本国民のメンタリティから見て、そんなことを言える場合ではない。そこで自分の言えないことを、「権威者」に言わせることで、間接的に自分のやりたいことを後押ししてもらおう、そういう意図が伝わってくるような気がする。

安倍政権としては、一方では消費税の増税を先延ばしすることで政権基盤を固め、他方では投資減税を進めることで世界の投資家の喝さいを受けたい、というわけなのであろう。財政規律のことはとりあえず棚上げにしても。





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