豊穣たる熟女たちと隅田川に浮かんで夜桜を見る

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先日船橋で催した熟女たちとの新年会の席上、桜が咲く頃になったら船に乗って、隅田川に浮かびながら夜桜見物をしましょうよ、という話になった。そこで日程の都合をあわせて出かけてみた。五時に浅草の松屋デパートで待ち合わせ、まず浅草堤の桜を見物する。今年は開花が例年より早いと聞いていたのだが、その後寒のもどりがあったりして思いのほか咲き広がらず、まだほんの一分咲きといった状態だ。それでも気の早い連中はいるもので、堤は花見をあてこんで敷かれたブルーシートで埋められている。

桜橋のあたりまでぶらぶらと歩いていく。こないだみたいによそ見をしていないで、ちゃんとついて来るんだよ、と言いながら筆者が先頭を歩く。彼女らはそれでもよそ見をしながら、よちよちと後をついて来る。

隅田川には多くの遊覧船が行き来している。川の両岸は桜並木が続いているが、浅草側よりは向島側の方がこころなしか花の開き具合がよいようである。このあたりには、ソメイヨシノの他に寒桜の類もすこしは混じっていて、それらがピンク色の花を広げている。中には花が大方散って葉桜になったものもある。

言問橋を過ぎたところに木組みの大きな鳥かごがあって、そのなかに白くて尾の長い鶏が止まっているのが見えた。てっきり本物の鶏と思っていたら、いつまでも身じろぎをしない。鶏と言えばこうるさい性分なのに、この落ち着きぶりは何だと思いながら近寄って見ると、木で拵えた贋物だと分かった。

船には吾妻橋の袂から乗り込んだ。テーブル席の並んだ船室に入り、さっそくあてがいぶちの弁当を広げる。缶ビールを飲みながら、窓の外を見る。船は人が歩く速度よりもゆっくりと進む。傍らを多くの舟が通り過ぎてゆく。のどかな気分だ。

弁当を食い終わる頃、後部のデッキで振袖さんの踊りがありますから、みなさん是非ご覧くださいとの案内があった。行って見ると、赤い振袖を着た芸妓が端唄にあわせて踊りを披露した。この振袖さんは、先程船室の中で日本酒を注文した客に酌をして歩いていた。年の頃は三十半ばだろう。女はいったいいくつくらいまで色気を感じさせることができるのでしょう、あとで熟女たちがそう言うから、あなたがたの年齢くらいまでは、十分色気を発散できますよ、とお世辞を言ってやった。

船は桜橋の上流で回転し、吾妻橋に戻ってきた。およそ小一時間の船旅である。旅というのは多少大袈裟かもしれないが、隅田川に浮かんで夜桜を見物し、おまけに芸妓の踊りまで見られたのだから、ちょっとした旅といってよいかもしれない。

船を下りた後、軽くやっていきましょうということになって、神谷バー裏手のビストロ亭という居酒屋に行ったところが、満席だという。そこで隣にある塚田農場という店に入った。鶏を食わせる店である。これが結構賑わっていて、入れ代わり立ち代わり新しい客が絶えない。その大部分が家族連れとか女ばかりのグループである。サラリーマン風の集団は殆ど見かけない。日曜だということもあるのだろう。

ここで鶏肉三昧のメニューを注文したが、中に馬刺しがあったのをT女が目ざとく見つけて注文した。彼女は馬肉が好きなのだという。他の二人もうまそうにそれを食う。そんなに馬肉が好きなのなら、そのうち蹴飛ばし専門の店に連れて行ってやるよ。

例によってとりとめのない話をする。今宵の彼女らは仕事の話を一切しなかった。そのかわりに世間を賑わせている噂話に花を咲かせる。その中でも、「五体不満足」で有名になったあの男のセックス・スキャンダルの話が出て、五体不満足でもあちらのほうは満足だったのね、と皆で不思議そうな顔をした。五体不満足と言うから、あちらも不満足だと思ったわ、と言うのである。

そこで筆者は、あちらの方にはまた天の特別の配慮が働いていて、身体の他の部分とはあまり関連がないのさ、と解説する。ただひとつだけをのぞいてはね、と。それは指の大きさとあちらの大きさがほぼ正比例するという点で、多くのアメリカ人はそれを強く信じている。そこで、今話題のトランプが、政敵から指の短さを指摘されて逆上した訳が判る。つまり自分のあれの短いことを揶揄されたと受け取ったのさ、と筆者が解説を続けると、ちなみにあなたの指を見せてごらんなさいな、と熟女たちが口を揃えて言う。筆者はやむなく両手の指を広げて見せた次第だったが、彼女らは大きな目でそれを見ては、あなたのあれは短い方なの?と同情するような口調で言う。筆者の指は普通の日本人の男よりも短めなほうなのである。

ところで熟女の皆さん、顔色や皮膚の艶がいいようだね。正月に見た時よりも一段と好調に見える。この調子が続けばハイキングも出来そうだ。どう、そのうちまた四人でどこかにハイキングをしてみては、と言ったところが、是非やりましょうよ、という話になった。夏の終りか秋の始まりに日光へでもハイキングしましょう。





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