ダンテとヴィルジリオをマレボルジャに運ぶジェリオン:ブレイクの「神曲」への挿絵

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ダンテとヴィルジリオは怪物ジェリオンの背中に乗って第八圏へと降りてゆく。ヴィルジリオがダンテの背後に乗り、ダンテを危険から守りつつ。

 かくて既に猛き獸の後に乘りたるわが導者にいたれるに、彼我に曰ひけるは、いざ心を強くしかたくせよ
 この後我等かゝる段によりてくだる、汝は前に乘るべし、尾の害をなすなからんためわれ間にあるを願へばなり
 瘧をわづらふ人、惡寒を覺ゆる時迫れば、爪既に死色を帶び、たゞ日蔭を見るのみにてもその身震ひわなゝくことあり
 我この言を聞けるときまた斯くの如くなりき、されど彼の戒めは我に恥を知らしめき、善き主の前には僕強きもまたこの類なるべし
 我はかの太く醜き肩の上に坐せり、ねがはくは我を抱きたまへといはんと思ひしかどもおもふ如くに聲出でざりき三
 されど危きに臨みてさきにも我を助けし者、わが乘るや直ちにその腕をもて我をかかへ我をさゝへ
 いひけるは、いざゆけジェーリオン、輪を大きくし降りをゆるくせよ、背にめづらしき荷あるをおもへ
 たとへば小舟岸をいでゝあとへあとへとゆくごとく彼もこの處を離れ、己が身全く自由なるをしるにいたりて
 はじめ胸を置ける處にその尾をめぐらし、これをひらきて動かすこと鰻の如く、また足をもて風をその身にあつめき
 思ふにフェートンがその手綱を棄てし時(天これによりて今も見ゆるごとく焦れぬ)または幸なきイカーロが
 蝋熱をうけし爲め翼腰をはなるゝを覺え、善からぬ路にむかふよと父よばゝれる時の恐れといへども
 身は四方大氣につゝまれ萬象消えてたゞかの獸のみあるを見し時のわが恐れにはまさらじ
 いとゆるやかに泳ぎつゝ彼進み、めぐりまたくだれり、されど顏にあたり下より來る風によらでは我之を知るをえざりき
 我は既に右にあたりて我等の下に淵の恐るべき響きを成すを聞きしかば、すなはち目を低れて項をのぶるに
 火見え歎きの聲きこえ、この斷崖のさまいよいよおそろしく、我はわなゝきつゝかたく我身をひきしめき
 我またこの時四方より近づく多くの大いなる禍ひによりてわがさきに見ざりし降下と廻轉とを見たり
 ながく翼を驅りてしかも呼ばれず鳥も見ず、あゝ汝下るよと鷹匠にいはるゝ鷹の
 さきにいさみて舞ひたてるところに今は疲れて百の輪をゑがいてくだり、その飼主を遠く離れ、あなどりいかりて身をおくごとく
 ジェーリオネは我等を削れる岩の下なる底におき、荷なるふたりをおろしをはれば
 弦をはなるゝ矢の如く消えぬ(地獄篇題十七歌から、山川丙三郎訳)


絵は怪物ジエリオン、人頭蛇尾の怪物としてイメージされている。その怪物の上に、ダンテとヴィルジリオが乗っている。









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