「トランプ大統領」もありえないことではない

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米共和党の大統領候補予備選でトランプ指名が確定した。このままの勢いでいけば、もしかしたらトランプが大統領になるかもしれない。少なくともトランプはアメリカ人が好きなジョークであって、彼が大統領になるのはありえない、などと言っていられなくなってきた。

もしトランプが大統領になり、自分のこれまでの言動をほとんど撤回しないとしたら、どうなるか。早速世界中でかまびすしい議論が巻き起こっている。アメリカの政治が大激変するのは確実なので、そのことで世界中に深刻な影響が出るのは間違いない。議論がホットになるのは自然なことだ。

アメリカの政策変更で最も深刻な影響を受ける国のひとつが日本である、そのことは言えるだろう。少なくとも安部晋三政権にとっては晴天の霹靂のようなもののはずだが、その割には安部晋三政権の面々はあまり騒いではいないようだ。騒ぐにあたらないと考えているのではなく、どう騒いでいいかわからない、というのが真相だろう。

トランプの政策の特徴を単純化して言えば、外交上では内向き姿勢の強化、内政上ではある程度大きな政府の容認ということになるだろう。アメリカは、内政の変化も対外関係に大きく作用するところがあるが、とりあえずは、あるいは日本にとっては、アメリカ国内のこととして冷静に見ることができる。アメリカが人権を軽視する政策をとろうと、社会福祉財源として増税をしようと、とりあえず日本にはかかわり無しで済ませられる。

ところが外交はそうはいかない。トランプは、うち向き政策を進め、日本に対してはその一環として、日米安保や対中関係の見直しに意欲を見せる可能性が高い。自分の安全は自分で考えろといった言い方を強めるだろうし、尖閣をめぐって対中関係が先鋭化したら、自分ひとりで解決しろと言ってくるだろう。ヒラリーのように、中国から尖閣を守るなどということは、恐らく言わないだろうし、するつもりもないだろう。

そうなると安部晋三政権は重大な局面に立たされるだろう。いや、安部晋三から他の人間にタッチしても、自民党がこれまでの対米従属政策から抜けられない限りは、対米ジレンマは続くだろう。いままでは、アメリカは日本の利害を考えて行動してくれる、とう安心感があって、アメリカの言いなりになってきたというのが、日本外交の姿だったわけだ。ところがそのアメリカが、もはや日本のことなど考えてくれず、自分のことくらい自分でしろ、と突き放されたら、どうしたらよいのか。当分の間自民党政権は、外交について思考停止の状態に陥るかもしれない。

自民党はこれまで、民主党よりも共和党との間に親近感を抱いてきた。民主党のオバマには随分と苦い思いもさせられた。特に安部晋三政権にとって不本意なのは、オバマ政権がいわゆる人類の普遍的価値にこだわることだ。基本的人権とか立憲主義とかいうその普遍的価値なるものが、安部晋三政権には理解できない。だから、オバマがいなくなった後は、共和党から大統領が出て、もっと実益に根ざした両国関係を築きたいと思っていたに違いない。それなのに、共和党から出てきた大統領が、日本を軽視乃至無視するようになるのは、安部晋三政権にとっては、全くの想定外だろう。





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