白貂を抱く婦人の肖像:レオナルド・ダ・ヴィンチの肖像画

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レオナルド・ダ・ヴィンチは、ミラノにやってきてから数年後(1487年ごろ)に、スフォルツァ公の宮廷画家になることに成功した。そこでダ・ヴィンチは、ミラノの貴顕たちを描いた肖像画を何点か製作した。「白貂を抱く婦人の肖像」と呼ばれるこの絵は、その代表的なもので、別名を「チェチリア・ガッレラーニの肖像」というように、スフォルツァ公ルードヴィコ・イル・モーロの寵姫と言われた女性を描いたものである。

貂はギリシャ語でガレーということから、チェチリアの苗字ガッレラーニとつながりがある。また一説によれば、この貂はルードヴィコ・イル・モーロを象徴しているという。もしそうだとすれば、この絵はルードヴィコとチェチリアの特別な結びつきをあらわしているということができる。もっともこの二人は、結婚することはなかった。

チェチリアの上半身は左側を向き、頭はそれと反対に右側に向いている。この構図はレオナルドが肖像画の模範的な構図として考案したものだとされる。貂もチェチリアの顔と同じ方向を向いており、画面に動きの感じをもたらしている。貂に軽く添えられたチェチリアの手の動きには繊細さと優雅さとが同居している。

暗い背景から、人物の明るい肌の色が浮き上がり、ダイナミックなコントラストを演出している。従来のイタリア絵画の伝統から一歩踏み出した肖像画として、高い評価が確立している作品である。(板に油彩 54.8×40.3cm クラカウ、チャルトリスキ美術館)







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